2022 Fiscal Year Research-status Report
Air-stable and water-resistant n-type organic thermoelectric materials using rational design of molecular-cationic dopant
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21K14428
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
秦 慎一 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 助教 (20796271)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有機熱電 / カーボンナノチューブ / 分子ラッピング / 比表面積 / 耐水性 |
Outline of Annual Research Achievements |
空気安定性と耐湿性に優れた有機材料ベースの半導体は、有機太陽電池、有機発光ダイオード 、有機薄膜トランジスタ 、およびフレキシブルエレクトロニクスの開発に不可欠である。2022年度は昨年度に引き続き、大気および水性環境でも特性が保持されるn型カーボンナノチューブ(CNT)フィルムの開発とその有機熱電特性を経時的に調べることを目的とした。特に、界面活性剤および電子供与性化合物をCNTに対するドーパントとして徹底的最適化することを検討し、以下の成果が得られた。なお、これらの成果は既に学術雑誌に投稿され、受理された。 ・ドーパント領域を拡大させ、むき出しのナノチューブの比表面積を小さくすると、酸素がアクセスできる領域が減少する。これにより、酸素自動酸化反応が抑制され、n 型 CNT の空気安定性と電力特性が改善されることがわかった。(ACS Appl. Electron. Mater. 2022, 4, 3, 1153-1162) ・ジェミニ界面活性剤の分子吸着能が優れているため、分子ラッピングCNTにおいては、特徴的で魅力的な二重の空気/水耐性が得られる。この結果、ナノチューブはn型熱電変換能を維持できる。(Carbon Energy. 2022, 1-13) ・通常、オキシエチレン系化合物はnドーパントとしては適さないことが一般的であったが、これに長鎖アルキル基を導入することで、優れたドーパント効果を得ることができる。(Energy Adv., 2023, 2, 86-90)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いくつかの例外を除いて、毒性と強い臭気のために取り扱いが難しい油溶性化合物や複雑な合成分子に研究が集中している。しかし、本実験のドーパントは合成工程も非常に短く、さらにはCNTに酸素/水の二重耐性を付与することができた。さらに、廃棄、再利用、および費用対効果に関する懸念と、住宅環境での熱電電源の将来的な広範な長期使用への期待を考慮して、高可用性と生分解性を特徴とするオキシエチレン系化合物のドーパント開発にも成功した。従来、熱力学的に安定したn型材料と見なすことができる他の有望なシステムは極めて限定されており、大部分はドーパントの導入時に生成される一時的な動的n形成である可能性があった。この状況を踏まえると、現在までの本課題の成果・進捗状況は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリエチレンイミンは、最初は大気中で不安定であることが報告されていたが、その後、n化に成功した報告が出てきた。このことは、ドーパントの含有量、ナノチューブ比表面積、ドーパントとCNTの化学的相互作用などの重要なパラメータの制御が不十分であることを示唆しており、異種材料界面が寿命に与える影響をより深く理解するための厳格な基礎研究の動機付けとなっている。本課題の結果は、ナノチューブに吸着されたドーパント領域の拡大とむき出しのCNT比表面積の縮小が、空気安定性と耐湿性を獲得するための鍵であることを明らかにした。ドーパントシェルを最適化することで、室温よりも早く自動酸化が起こる高温下でも、酸素分子や水分子とCNTの直接接触を遮断し、CNTの非局在負電荷を安定化させる可能性がある。これにより、今後さらなる研究の必要性が示された。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画を変更し、翌年度まで延長することで当初の研究目的を達成することが出来るため。
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