2022 Fiscal Year Research-status Report
革新的合金設計指針による生分解性Fe基ミディアムエントロピー合金の創製
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21K14429
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
植木 洸輔 近畿大学, 理工学部, 講師 (10845928)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生分解性金属材料 / メカニカルアロイング / 放電プラズマ焼結 / Fe基合金 / 腐食特性 / 機械的特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
①Fe-Mn-Mg合金作製プロセスにおける焼結条件の検討を行った。2021年度の研究においては、Fe-21Mn-xMg(x = 0, 10, 20, 30, at.%)合金をメカニカルアロイング法と放電プラズマ焼結法により作製したが、その焼結温度は773 Kのみであった。そこで2022年度は焼結温度823 Kにて焼結体を作成した。773 K焼結体と比較して823 K焼結体は気孔率が増加しており、機械的特性にも劣るという結果となった。 ②Fe-Mn-Mg合金のMg量最適化の検討を行った。2021年度に作製したFe-Mn-Mg合金焼結体では、10at.%のMgを含有した合金は、Mgを含有しないFe-Mn合金よりも低い気孔率を示したものの、20, 30at.%のMgを含有した合金においてはMg含有量増加とともに気孔率が増加する傾向を示したことから、2022年度は新たに5, 15at.%のMgをが入する合金を作製した。Mg含有量10at.%まではMg含有量増加とともに気孔率が低下したが、Mg含有量15at.%では、Mg含有量10at.%と比較して気孔率が増加したことから、Fe-Mn-Mg合金における最適Mg量は10at.%であると考えられる。 ③2021年度に作製したFe-Mn-Mg合金をベースとして、Cを添加した合金を作製した。Cを添加することで、メカニカルアロイング後に粉末粒径が僅かに微細になる傾向を示した。このことから、焼結体の機械的特性向上の可能性が示唆された。腐食速度については、C添加による大きな影響は確認されなかった。 ④2021年度のFe-Mn-Mg合金の創製に関する研究について、日本金属学会講演大会にて口頭発表を行うとともに、論文を1報発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①2021年度のFe-MgおよびFe-Zn合金の創製と諸特性評価の研究成果から、Fe-Zn合金については優れた強度を示すものの、腐食速度が純Feと比較して増加しないことが明らかとなった。このことから、Fe基合金へのZn添加は生分解性金属材料としてFeを活用する上ではあまり有効ではないと判断し、2022年度は当初の計画を前倒してFe-Mn-Mg-C合金の創製および諸特性評価を行うことができた。Cを添加することで、メカニカルアロイング後の粉末粒径が僅かに微細になり、焼結後の気孔率についてもわずかに低下する傾向を示した。機械的特性試験については、信頼性の高いデータが取れていないものの、気孔率の低下が機械的特性の向上に有効であると考えられる。C添加が腐食特性に与える影響については確認されていない。 ②当初の研究計画通り、Fe-Mn合金への最適Mg添加量の検討については、2021年度に作製した合金のうち、最も優れた特性を示したFe-21-10Mg(at.%)合金に近い組成が最適組成であると推定し、Mg含有量5, 15at.%の合金を作製した。機械的特性と腐食特性の観点から、10at.%が最適であるという研究成果が得られた。①および②の研究成果により、今後の研究においてはFe-21Mn-10Mg-3C(at.%)合金に対象を絞ることができる。 ③当初の研究計画には含まれていなかった、焼結条件の検討について、2022年度は焼結温度に関する検討を行うことができた。2021年度に行った焼結条件(焼結温度773 K)のほうが2022年度に行った焼結条件(焼結温度823 K)よりも気孔率の低い焼結体を作製可能である、という研究成果となったものの、今後の研究における焼結条件検討の指針を構築することができた。 ④本研究の成果について、論文を1報発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①2022年度までの研究において作製した試料の腐食特性はリン酸緩衝生理食塩水を用いた電気化学試験および浸漬試験によって評価していた。このことから、当初の研究計画に従い、試験溶液にHanks溶液を用いた電気化学試験および浸漬試験により、再度腐食特性の評価を行う。さらに、2022年度に作製したFe-Mn-Mg-C合金については電気化学試験による腐食特性評価を行う。 ②焼結条件の検討について、放電プラズマ焼結時の印加圧力が焼結体の微細組織および諸特性に与える影響を調査する。これまでの焼結体は印加圧力100 MPaで作製していたが、2023年度においては、新たに超硬製の焼結型を作製し、最大印加圧力600 MPa目安として、印加圧力を変化させた焼結体を複数作製し、その微細組織および諸特性を分析・評価することで、Fe-21MN-10Mg-3C(at.%)合金粉末における放電プラズマ焼結時の最適印加圧力の検討を行う。 ③2022年度に作製したFe-21-10Mn-3C(at.%)合金について、温度773 ~ 1073 K、保持時間0.6 ~ 7.2 ks程度の条件にて熱処理を行い、熱処理が焼結体の気孔率、相構成、機械的特性、腐食特性に与える影響を調査する。②の研究において、焼結時の印加圧力を変化させた試料も作製することから、焼結時の最適印加圧力が決定次第、最適印加圧力にて焼結した試料についても同様の検討を行うことで、2022年度までに作製したFe-21Mn-10Mg-3C(at.%)合金のさらなる特性改善を目指す。 ④これまでの研究において、Mgを10at.%添加することでメカニカルアロイング後の粉末粒径が微細になることが明らかとなった。今後は、そのメカニズムを解明する。 ⑤国内学会及び国際会議での研究発表を行うとともに、Fe-Mn-Mg-C合金に関する論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
2022年9月に中古の放電プラズマ焼結機を実験室に設置したものの、初期点検時に不具合が見つかり、修理が必要となった。2023年1月に修理を行い、装置が稼働できるようになったが、2023年1月時点での本研究費残高では修理費用を全額支払うことができなかった。そのため、2023年度の本研究費が入り次第、修理費用を支払うこととしたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については全額放電プラズマ焼結機の修理費用として使用予定である。
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