2022 Fiscal Year Research-status Report
ジュール発熱を利用した新規固相接合法における接合メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K14431
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鴇田 駿 東北大学, 工学研究科, 助教 (60807668)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 固相接合 / 溶接・接合 / ステンレス鋼 / アルミニウム合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、研究計画に従い、ステンレス鋼同士の通電拡散接合の接合メカニズムを解明するための研究を行った。 ステンレス鋼やアルミニウム合金の表面には自然酸化膜が存在しており、固相接合を達成するためにはこの酸化膜の破壊・除去と、露出した新生面の密着が重要であると考えられている。しかし、通電拡散接合における短時間・小変形の接合プロセス中にどのように酸化膜が除去されているのかは明らかになっていない。そこで2022年度は、被接合材の表面に意図的に厚い酸化膜を形成した状態でステンレス鋼同士の通電拡散接合を行い、接合界面における酸化膜の挙動を走査電子顕微鏡(SEM)・透過電子顕微鏡(TEM)により観察した。 接合時間を変化させて作製した接合界面を観察した結果、接合時間の増加とともに界面の酸化膜が分断、凝集される様子が観察された。TEM観察の結果、酸化膜が分断された箇所では金属同士が接合されている様子が観察され、酸化膜の分断・凝集により露出した新生面が接合するメカニズムが提案された。 また、2023年度の課題でもあるステンレス鋼とアルミニウムの異種金属接合についての検討も並行して進めている。接合時間、接合温度、接合圧力を系統的に変化させたときの継手の引張強度を評価し、最大でおよそ75MPaの引張強度が得られた。接合部の断面観察や引張試験の破断面観察を行い、接合強度がさらに向上する接合条件の探索や、異材接合の接合メカニズムの解明に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね研究計画通りに研究を進めている。ステンレス鋼同士の接合におけるメカニズム解明に関しては、酸化膜を意図的に付与した試験片を用いた実験により接合中の酸化膜の挙動を調べることができた。一方で、EBSDによる変形挙動の解析にはより詳細な解析が必要となるため、2023年度も継続して検討を行う。 2023年度に予定している異種金属接合については先行して検討を進めており、研究項目に定めた評価項目のうち引張強度についての評価が予定よりも早く進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画に基づき、2023年度はステンレス鋼とアルミニウム合金の異種金属接合についての研究に注力する。先述したように接合条件を変化させたときの引張強度の傾向が得られつつあるため、接合条件の最適化による接合強度の向上に取り組む。また、異種金属接合でしばしば問題となる金属間化合物の厚さや分布状態についての解析を進める。 本研究課題の最終年度であることから、これまでに行ってきた研究を総括し、通電拡散接合による接合メカニズムの解明に取り組む。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナ禍のため出張旅費が発生せず、材料購入費が予定より少なかったことから、2022年度の使用可能額が多く生じていた。差額分は共通設備(主に透過電子顕微鏡の試料作製および観察)の使用料として使用した。 2022年度は、参加を予定していた国内学会がオンデマンド開催となったほか、国際会議が国内開催となったため、予定よりも旅費が少なくなった。また、初年度同様材料購入や試験片加工の費用が少なかったため、物品費からも残額が発生した。 2023年度の研究計画においても、詳細な微細組織観察のため共通設備を多く利用することが見込まれており、発生した次年度使用額は主に共通機器使用料に充てる予定である。
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