2021 Fiscal Year Research-status Report
巨大ひずみ加工とマルテンサイト変態で組織制御した高強度・高導電性Al線材の開発
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21K14436
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
増田 高大 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60838639)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 巨大ひずみ加工 / 過飽和固溶 / 時効析出 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルミニウム(Al)は軽量かつ導電性に優れ、カルシウム(Ca)添加によりさらなる軽量化を図ることができる。通常CaはAl中にわずか0.002%しか固溶しないものの、本研究では、高圧ねじり(HPT)加工法を用いた巨大ひずみ導入によりCa固溶量を増大させて新たに時効特性を付与させることを目指す。 Ca添加量は亜共晶の1%, 3% および共晶組成の7.6%とした。HPT加工は、6 GPaの高圧下で最大100回転施した。いずれの組成においても、一定以上の相当ひずみ導入で硬さは急激に上昇し始める傾向がみられた。100回転後の硬さは、199HV(1%Ca)、272HV(3%Ca)および228HV(7.6%Ca)となり、3%Ca添加で最大硬さが得られることがわかった。 SEM観察およびXRD分析結果から、HPT加工量の増加とともに第二相粒子であるAl4Ca相の体積割合が減少した。特に3%Ca材では、100回転後にAl4Ca相のピーク強度が大幅に減少し、最大2.6%のCaを固溶できることが示唆された。TEM観察によると、3%Ca材では10回転後に結晶粒径が350 nmに超微細化され、粒内には10 nm程度に微細化されたAl4Ca相が分散する組織となっていた。回転数を100回転に増加すると、結晶粒径は15 nmまで極端に超微細されることが確認され、かつ残存しているAl4Ca相は確認されず固溶量を増大できたためと考えられる。このように、HPT加工の利用でCa固溶量を通常の固溶限以上に増大させることができた。そこで100℃で時効処理を行ったところ、3%Ca添加の100回転材では硬さが最大23 HV向上することを確認し、新たに時効硬化特性を付与することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、Al-Ca合金にHPT加工を適用することで、Ca固溶量を増大できることを確認している。加えて、その後時効することで硬さはさらに向上し、狙い通り新たに時効硬化を付与させることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では、機械的特性は硬さ試験でのみしか評価できていない。そこで今後、時効材も含めて引張試験を行い、強度と延性を評価する。また強度と導電性の両立の観点からも研究を進め、高導電率の保持に最適な組成・組織を明らかにしていく。加えて、線引き加工によりHPT加工材から直径0.1mmを目安とした細線材の作製を試みる。これにより、線材加工に伴う組織変化や導電率変化を調査する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスのため、対面予定であった研究打ち合わせをオンラインで行うことになり次年度使用額が生じた。次年度の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(7 results)