2021 Fiscal Year Research-status Report
イオン・ラジカルが共存する高密度プラズマからの超硬質・低摩擦な窒化炭素膜の創製
Project/Area Number |
21K14440
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
田中 一平 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (40781034)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラズマ / CVD / 窒化炭素 / 高硬度 / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒化炭素はダイヤモンドを超える硬度を示す可能性がある材料であるが、未だ超硬質窒化炭素は得られていない。硬質成分を含む膜を作製するためには低圧力下でイオンの衝撃を加えること、高窒素含有な膜を得るためには高圧力下でCNラジカル主体の高密度プラズマで成膜することが重要である。これらを両立するためには、低圧力下で高密度プラズマを生成する必要がある。本研究ではこれらの条件を満たす高密度プラズマ生成法であるマイクロ波励起高密度基材近接プラズマ(MVP)法を用いた高窒素・高硬度窒化炭素膜の創成を目指す。 そこで、MVP法を用いたプラズマ状態を分析し、CNラジカルとN2+イオンの制御を行った。原料ガスにはCH4-N2またはCH4-NH3の混合ガスを使用し、CH4濃度、マイクロ波出力、基板印加電圧、圧力、パルスマイクロ波Duty比といった制御パラメータの変化に伴うプラズマ中のCNに対するN2+の発光強度比を算出した。CH4濃度を10%から70%まで増加させることで発光強度比は減少し、N2系ガスでは0.5-0.9程度、NH3系ガスでは0-0.2程度の変化であった。また、圧力、マイクロ波出力およびDuty比の増加に伴いN2系ガスでは発光強度比は減少したが、NH3系ガスでは大きな変化はなかった。本実験によりCNに対するN2+の発光強度比は0から1.4の範囲で制御可能であった。一方、通常のDCプラズマではMVPと同条件下ではCNラジカルが確認されなかった。 さらに、これらのプラズマ生成状態を基に窒化炭素の成膜を行った。マイクロ波の発振モードを連続波とした場合には基板温度が900℃程度と高温となり、グラファイト化した窒素含有量が1.9at.%程度の薄膜が得られた。しかし、マイクロ波をパルス化し、基板温度を270℃程度と低下させ、薄膜の窒素含有量は5.6at.%と増加させることが可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒化炭素の成膜を行う上で重要となるプラズマ状態の制御範囲を確立することができた。従来のDC法ではCNラジカルを確認できない条件下でMVP法によってCNラジカルの生成が確認され、当初の狙い通りであった。また、窒素量は少ないが薄膜の作製が確認できており、今後研究を進めていく上での土台となる知見を蓄積できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果に基づき、高窒素含有な窒化炭素膜の作製を進める。安定したプラズマ生成に必要最低限な印加電圧に調整し、低電圧下での成膜を試みる。得られた薄膜をX線光電子分光により測定し、各種条件における窒素量と発光状態の関係を明らかにする。加えて、基板に流入するイオン量を電流から換算し計測することで、イオン量と窒素量の関係も考察する。また、これまでの知見と今年度の結果から高温領域ではグラファイトし、窒素量も減少するため、現在制御可能な200℃-900℃の間で基板温度を制御して実験する。これらにより、窒素量が50at.%以上の高窒素含有窒化炭素を目指す。
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Causes of Carryover |
予定していた学会がオンライン開催となったため、予定よりも旅費やその他の出費が少なくなった。これらの分を翌年度では学会参加費や研究会への参加にあてることで情報の発信や情報収集にあてる。加えて、消耗品の購入にあてることで実験を円滑に進める。
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Research Products
(6 results)