2022 Fiscal Year Research-status Report
環境中の金属イオンがもたらすステンレス鋼の耐食性低下機構の解明
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21K14443
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
青山 高士 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (60752623)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ステンレス鋼 / 局部腐食 / 金属カチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、環境中の金属イオンがステンレス鋼の表面に孔食起点を生成し、孔食発生を促進する機構を解明することを目的としている。これまでの研究の結果、1 mMのCuCl2を含む0.1 M NaCl中において、鋼中の不純物元素量を極限まで低減させた316EHP鋼の孔食電位は0.1 M NaCl中と比較して大きく低下したのに対し、SUS 316L鋼では大きな違いは見られないことが分かった。以上のことから、Cu2+がステンレス鋼の耐孔食性に及ぼす影響は鋼種によって異なる可能性がある。316EHP鋼は孔食起点となる介在物を含まないのに対し、SUS 316L鋼には孔食の起点となる硫化物系介在物が存在しており、Cu2+によって生じる孔食起点に優先して硫化物系介在物を起点とした孔食が生じたことが原因の一つとして考えられる。そこで、硝酸不働態処理を用いてSUS 316L表面の硫化物系介在物を除去する前処理を行った後に孔食電位測定を行い、より高い電位域においてCu2+が孔食発生に及ぼす影響を調査することを試みた。その結果、不働態処理を行った316EHP、SUS 316L両ステンレス鋼の孔食電位は、Cu2+を含まない0.1 M NaCl中と比較してCu2+を含む0.1 M NaCl中では上昇するという結果が得られた。以上の結果から、鋼表面の状態によって、溶液中のCu2+はステンレス鋼の耐孔食性を上昇させる可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに溶液中のCu2+がステンレス鋼の耐孔食性に及ぼす影響はステンレス鋼の組成、表面状態によって異なる可能性があることを見いだせたため、おおむね順調に進展している、と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間最終年度となる令和5年度においては、溶液中のCu2+がステンレス鋼の耐孔食性を低下させる条件及び上昇させる条件を見出す。腐食試験前後における試料の表面分析を行うことで、表面に付着するCuの化学状態分析や皮膜形成機構の解析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度において、新たに腐食試験用試料を製作する予定だったが、腐食試験用試料に必要な組成のステンレス鋼とほぼ同等の試料を所属研究機関が所有していたため、新たに試料を製作する必要が無くなった。このことにより、試料製作に係る費用が次年度使用額として生じることとなった。生じた次年度使用額は、追加試験のために新たに製作する必要が生じた試験片の製作費用及び物品購入費として次年度分研究費と合わせて使用する。
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