2022 Fiscal Year Research-status Report
高温X線in-situ光電子分光法に基づく新たな金属溶液論の展開
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21K14447
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邉 学 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (50880283)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 電磁浮遊法 / 静電浮遊法 / HAXPES |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、規則―不規則変態が生じる合金系の溶融金属の熱物性、熱力学関数の相関性について、電子状態の観点から明らかにすることが目的である。 従来、溶融金属に生じる過剰体積は、1988年にIidaとGuthrieによって報告された過剰体積と混合のエンタルピーとの相関性で考察されるのが一般的であった。すなわち、過剰体積が正の値を示す場合、異種原子間相互作用を反映する過剰エンタルピーは正の値をしめす。これに対する解釈としては、異種原子間に斥力が生じることで異種原子間の距離が大きくなることで体積が大きくなる。過剰体積が負の場合は、逆のことが生じている。しかし、固体状態で規則―不規則変態を生じる合金系においては、IidaとGuthrieモデルは適応することができないなど問題が生じている。そこで我々の研究グループでは混合のエンタルピーに変わり過剰ギブズエネルギーを用いた相関性を用いた新たな金属溶液論を提唱した。しかし、これらの合金系では、遷移金属内の3d電子数が増加するとともに、過剰体積は増加し、過剰ギブズエネルギーが減少するという従来では考えられない相関性が生じている。そこで本研究では、溶融金属の電子状態から、この相関性の原因を明らかにする。まず、本研究を追行するにあたり、電子状態を測定するため光電子分光法を選択した。ただし、市販の光電子分光装置では溶融金属の蒸発の影響でX線および電子が散乱され測定することが困難である。この蒸発の影響を抑えるべく高強度X線が必要であったため、高輝度放射光施設SPring-8を使用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、溶融金属の電子状態を直接測定することが可能であるかどうか確認を行った。まず、試料の加熱を行う前に、SPring-8の硬X線光電子分光で電子状態が測定可能であるかどうかを確認するべく、溶融状態からの急冷によりFe-Pd合金の規則相、不規則相を作製し、測定を行った。この測定により、規則相、および不規則相の電子状態の違いを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
急冷試料による規則相、不規則相の電子状態の違いを硬X線光電子分光で測定することができたため、試料の加熱による不規則相および溶融状態のin-situの光電子分光測定を予定している。加熱機構は電子衝突法を採用しており、1000℃程度までの加熱の確認はできている。
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Causes of Carryover |
ウクライナでの戦争に伴い、ヘリウムガスの入手が困難および費用の増加が生じた。次年度は、ヘリウムガスに頼らない真空下での実験法を確立するために、科研費を使用する。
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