2021 Fiscal Year Research-status Report
Laser doping effects of hydrogen storage metals for selective hydrogen permeation
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21K14453
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中川 祐貴 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00787153)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レーザードーピング / レーザーアブレーション / ナノ秒パルスレーザー / 表面改質 / 水素吸蔵金属 / 水素透過 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水素貯蔵材料の合成において適用例の少ないレーザープロセスに着目し、チタンなどの水素吸蔵金属の表面を、有機溶媒中でレーザードーピングにより改質することで、炭素、窒素、ホウ素などのドープする元素種やナノ構造の違いが、吸蔵・失活速度に及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。 水素吸蔵金属のチタン粉末(-100mesh)をアセトンに入れ、攪拌しながらYAGレーザー(波長532 nm, パルス幅5-7 ns)を照射し、炭素ドープを試みた。レーザーは繰り返し周波数とフルーエンスを変えて、種々の条件での照射を行った。照射後、アルゴン雰囲気のグローブボックスで溶媒を一晩乾燥させ、得られた粉末の水素吸蔵温度と結晶相、表面組織の解析を行った。その結果、周波数20Hz, フルーエンス0.29J/cm2の照射条件下で水素吸蔵開始温度が未処理材と比較して30℃ほど低下することが判明した。SEM-EDS分析より未処理材と比較して炭素の量が増加しており、アセトン中での照射により炭素がドープされたと考えられる。未処理材は450℃付近で水素を吸蔵するが、一方2Hz, 0.12J/cm2の条件で照射した試料は500℃までに水素を吸蔵せず、照射条件によっては吸蔵速度が低下することが判明した。 また、ガス雰囲気で試料へのレーザー照射が可能なガス環境チャンバーを作製し、水素雰囲気でのアブレーションによる鉄ナノ粒子作製を行った。大気中アブレーションと比べて酸化を抑制できる結果を得ることができた。この他に、Feと六方晶窒化ホウ素(h-BN)粒子の水素雰囲気ミリングによる水素吸蔵材料の試作を行い、その熱分解挙動の調査や透過電子顕微鏡によるその場観察を実施することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チタン粒子のアセトン中でのレーザー照射による表面改質について、種々の条件で照射を行ったところ、水素吸蔵速度にも差異が現れ、X線回折や電子顕微鏡解析の結果からも、レーザー照射による影響が観測された。これらの結果を基に、今後レーザー照射条件や溶媒の選定を適宜見直す予定である。 また、ガス雰囲気で試料へのレーザー照射が可能なガス環境チャンバーを自作し、水素雰囲気でのレーザーアブレーションによるFeナノ粒子作製を行うことができた。今後、このチャンバーを使用することで、ガスの元素種のドープが可能になると考えられる。 レーザープロセスとの比較対象として、FeとBN粒子を水素雰囲気下でミリングを行い、その後の加熱中での電子ビーム照射によるホウ素や窒素ドープ効果に関する実験結果も得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に引き続き、チタン粒子の有機溶媒中でのYAGレーザー照射による表面改質に取り組む。アセトン中での照射条件について更に検討を進め、ヘキサンやキシレンなど別の有機溶媒を用いての表面改質も行うことで、水素吸蔵温度を室温近くまで低下できるような照射条件を探索する。作製した試料の構造や組織について、XRDやSEM・TEM観察より明らかにする。また、ホウ素や窒素のドープのために、h-BN粒子を添加してレーザー照射することで、そのドープを試みる。BNと金属粒子(TiやFe)をミリングにより複合化した場合とレーザー照射によるドープの場合で、構造や水素吸蔵特性にどのような差異が現れるかを検証する。 自作したガス環境チャンバーを用いて、水素、大気、窒素雰囲気でのTiやFeのレーザーアブレーションやドーピングによる表面改質を行い、その酸化状態や水素吸蔵特性についての評価を行う。また、FeとBN粒子のミリングによるホウ素・窒素ドープやその後の加熱中電子ビーム照射によるドープ効果について検証する。
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Causes of Carryover |
2021年度末に未使用額の端数が生じ、2022年度始めに必要な消耗品に充てることにする。
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