2021 Fiscal Year Research-status Report
超臨界セグメント空間を利用した有機修飾磁性ナノ粒子の連続・精密合成プロセス
Project/Area Number |
21K14454
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
織田 耕彦 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80883149)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | supercritical CO2 / iron oxide nanoparticles / surface modification / hydrothermal synthesis / extraction / flow process |
Outline of Annual Research Achievements |
有機修飾磁性ナノ粒子の二次元超格子に基づいた,超高密度磁気記録デバイスの産業実用化に向けては,均一粒径・高修飾率の有機修飾ナノ粒子を連続・大量合成するプロセスの確立が必要となる.本研究課題は,「二段反応場を利用した粒子の形成場と成長場の分割」と「超臨界CO2相と水相が混在するセグメント空間」の融合を念頭に置いた「均一粒径を有する有機修飾ナノ粒子の連続合成プロセスの構築・設計」という目的を設定し,現在検討を進めている. 本研究目的の達成に向けては,「高温高圧水中の有機修飾ナノ粒子の晶析機構」,「超臨界CO2中での有機修飾ナノ粒子の晶析機構」,「水相から超臨界CO2相への有機修飾ナノ粒子の抽出挙動」を把握し,更にはフロープロセスへ展開することが不可欠である.そこで昨年度は,フロープロセスへの展開を念頭に,上記三項目に対して,バッチプロセスによる検討を遂行してきた. 1点目として,有機修飾ナノ粒子の水熱バッチ合成を遂行してきた.Fe(OH)2ゾルを前駆体に用いることで,磁気を有するFe3O4ナノ粒子の合成に成功すると共に,直鎖のカルボン酸の炭素鎖長を変化させることで,表面疎水性を制御できることを明らかにした.2点目として,超臨界CO2を利用した有機修飾ナノ粒子のバッチ合成を遂行してきた.超臨界CO2への溶解性に優れるデカン酸を添加することで,酸化物系では初めて超臨界CO2中での有機修飾ナノ粒子の合成に成功した.3点目として,水-超臨界CO2系における有機修飾ナノ粒子のバッチ抽出検討を遂行してきた.高圧可視化セルを利用することで,水-超臨界CO2の界面に有機修飾ナノ粒子が集積しやすいことを明らかにすると共に, CO2出口でトラップしたナノ粒子を分析することで,数十%のナノ粒子を抽出可能であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的である「均一粒径を有する有機修飾ナノ粒子の連続合成プロセスの構築・設計」を達成するべく,昨年度はバッチプロセスを用いた「高温高圧水中の有機修飾ナノ粒子の晶析機構の解明」,「超臨界CO2中での有機修飾ナノ粒子の晶析機構の解明」,「水相から超臨界CO2相への有機修飾ナノ粒子の抽出挙動の把握」に取り組んだ. 「高温高圧水中の有機修飾ナノ粒子の晶析機構の解明」については,既にマグネタイト(Fe3O4)ナノ粒子の合成や表面疎水性の制御に成功している.また,これらの成果は,国際学会7th ISHA2021で発表しており,国際誌J. Supercrit. Fluidsへも投稿準備中である.「超臨界CO2中での有機修飾ナノ粒子の晶析機構の解明」については,酸化物系では初めて超臨界CO2中での有機修飾ナノ粒子の合成に成功すると共に,反応場の水濃度を操作することで,ナノ粒子の表面修飾密度の制御も可能であることを実証した.既に本成果において,国内学会で2件,国際学会で3件の研究成果発表を行い,国際誌RSC advanceへも掲載されている. 「水相から超臨界CO2相への有機修飾ナノ粒子の抽出挙動の把握」についても,水-超臨界CO2の界面に有機修飾ナノ粒子が集積しやすいことや,数十%のナノ粒子を抽出可能なことが明らかになっており,国際学会での研究成果発表も予定している. 以上のように,回分プロセスを用いた検討を通じて,「水熱下での晶析機構」,「超臨界CO2中での晶析機構」,「水相から超臨界CO2への抽出挙動」に関する多くの知見が蓄積されている.これらの知見は,フロープロセスへの展開ひいては「均一粒径を有する有機修飾ナノ粒子の連続合成プロセスの構築・設計」を遂行する上で不可欠であり,本研究課題は概ね順調に進行していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は,「均一粒径を有する有機修飾ナノ粒子の連続合成プロセスの構築・設計」という目的の達成に向けて,【A検討】高温高圧水中での有機修飾ナノ粒子の晶析機構の解明,【B検討】超臨界CO2中での有機修飾ナノ粒子の晶析機構の解明,【C検討】統計熱力学モデルと分子情報を利用した液液平衡挙動の予測,【D検討】水+超臨界CO2系のセグメント空間を利用した有機修飾ナノ粒子の合成指針の確立 を遂行する. 前述したように,昨年度は【A検討】と【B検討】において,高温高圧水と超臨界CO2の各反応場を利用した,有機修飾磁性ナノ粒子のバッチ合成を遂行してきた.その結果,各反応場を利用して合成粒子の結晶構造や表面修飾密度を制御することに成功し,高温高圧水中と超臨界CO2中における「操作条件の設定指針」や「界面活性剤の選定指針」を得てきた.更に,水+超臨界CO2系での有機修飾ナノ粒子の抽出に関する「操作条件の設定指針」も獲得している.本年度は,これらの指針に基づき,バッチからフロープロセスへ展開することで,連続プロセスの構築が推進されると共に,【A検討】と【B検討】が概ね遂行される見込みである.また,【C検討】において,昨年度は,統計熱力学モデルを利用することで,水+超臨界CO2系における水分配量の予測を成功させている.本年度は,量子化学計算から得られる分子情報を統計熱力学関係に導入した「相平衡計算手法」を利用することで,水+超臨界CO2系における界面活性剤の分配量も予測する.最終年度は,以上の【A~C検討】を通じて得られる知見を総動員して,【D検討】に取り組むことで,「超臨界セグメント空間を利用した二段制御システムの設計指針を確立」を目的とした本研究課題が大きく推進されると考えられる.
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