2021 Fiscal Year Research-status Report
分光学的アプローチを駆使したゼオライト触媒上の酸・塩基協奏型活性点の創出
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21K14459
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大須賀 遼太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30874250)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ゼオライト / 酸・塩基協奏型活性点 / Alペアサイト / 位置選択的脱Al処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼオライト中に酸・塩基協奏型の触媒活性点を創出するため、Alペアサイトを豊富に有するゼオライトの調製を試みた。本年度は*BEA型ゼオライトを中心に検討を行った。先行研究において、FAU型ゼオライトを原料として合成したCHA型ゼオライトは、Alペアサイトを多く含むとの報告があったため、本研究では、*BEA型ゼオライトへの適用を模索したが、Alペアサイトの構築には至らなかった。 そこで、代替案として、ポスト処理による位置選択的な脱Al処理を施すことで、Alペアサイトの割合が多い*BEA型ゼオライトの調製を試みた。Co2+イオンは、ゼオライト中のAlペアサイトにイオン交換されることが知られている。したがって、Co2+イオン交換を施した*BEA型ゼオライトを脱Al処理することで、Alペアサイトを保護した状態で、孤立したAl原子を取り除くことに取り組んだ。ゼオライト骨格中のAlペアサイトは、ICP測定により、Co2+/Alモル比を算出することで定量した。まず初めに、硝酸を用いた脱Al処理を行ったところ、脱Al処理中にCo2+とプロトンのイオン交換が進行することで、Alペアサイトを十分に保護できないことが明らかとなった。この結果を踏まえ、硝酸コバルト水溶液中での脱Al処理を検討した。その結果、処理前に比べてAlペアサイト量が増加することが確認されたため、本手法を用いることで、骨格内の孤立Al原子の選択的脱離が可能であると判断した。また、*BEA型構造以外への適用についても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたAlペアサイトを豊富に含む*BEA型ゼオライトの直接合成は達成できなかったが、代替案として行った位置選択的な脱Al処理によって、予定していた触媒材料を準備することができた。また、本手法はポスト処理であるため、*BEA型以外の構造にも適用できる可能性を秘めている。このように、次年度の研究計画を立てる上で重要な知見を得たことから、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①IR、XAS、NMRを用いた精密構造解析:本年度に確立した位置選択的な脱Al処理を施すことで、Alペアサイトの含有量が異なる*BEA型ゼオライトを調製する。それらの試料に対し、アルカリ金属カチオン交換を施し、ゼオライト骨格中に塩基点を導入する。得られた各試料をIR、XAS、NMRなどを用いてキャラクタリゼーションすることで、酸点と塩基点の位置関係について精査する。IR法を用いたゼオライトの酸性質および塩基性質の評価方法については確立されているが、その位置関係に関する議論などは十分に行われていないのが現状である。そこで、固体NMRやXASと組み合わせ、Alの位置や金属カチオンの性質を多面的に解析することで、酸点、塩基点の位置関係について議論する。 ②酸・塩基ペアサイトの触媒活性の評価:酸・塩基ペアサイトを有する試料の触媒反応活性(4-nitrobenzaldehydeとacetoneのアルドール縮合)を評価することで、ゼオライト骨格中の酸・塩基協奏型触媒活性点の性質について理解を深める。本反応系は、酸・塩基協奏型の活性点でより促進されることが報告されているため、モデル反応として適している。①で述べたキャラクタリゼーションの結果と、反応活性評価の結果を併せて考察することで、ゼオライト中の酸・塩基協奏型活性点の性質について理解を深める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、参加予定であった学会等の中止およびオンライン化が多くなり、旅費を中心に当該予算の執行ができなかった。そのため、次年度へ繰り越しとし、必要な消耗品の購入費用や旅費、学会参加費として、適切な予算執行に努める。
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Research Products
(11 results)