2021 Fiscal Year Research-status Report
Unprecedented C-H Bond Functionalization by Design of Metal Nanoparticle-Metal Oxide Cluster Composite Catalysts
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21K14460
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷田部 孝文 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60875532)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 酸化物クラスター / C-H結合活性化 / DFT計算 / 協奏的触媒作用 / 酸化的脱水素 / 脱カルボニル / 酸化的付加 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多点吸着や協奏的電子移動が可能なナノ粒子触媒上に特異なC-H結合活性化やプロトン共役多電子移動を可能にする酸化物クラスターを複合化させた、従来の錯体分子触媒とは全く異なるナノ粒子-酸化物クラスター複合触媒を利用し、新しい選択性を示す高効率C-H結合官能基化を実現することである。2021年度は、(1)CeO2担持Pd(II)Ox-on-Au(0)ナノ粒子触媒の形成メカニズムの解明と本触媒によるカルボニル化合物の高効率α,β-脱水素反応の特異な活性点構造・C-H結合活性化の反応機構解明、(2)より高効率なC-H結合活性化を示すナノ粒子-酸化物クラスター複合触媒の計算化学的提案と実験的合成、を行った。(1)については、種々のキャラクタリゼーション・対照実験・DFT計算等を組み合わせ、CeO2担体上空気中かつ水中で還元処理を行うことでPd(II)Ox-on-Au(0)ナノ粒子が形成されること、Pd(II)-O-Au(0)が脱水素の活性点構造であること、ルイス酸-ブレンステッド塩基ペアが基質を同時活性化し高効率C-H結合活性化が実現できていることを明らかとし、今後の本研究の触媒設計の指針の一つを確立した。(2)については、(1)で得られた知見を活かし、DFT計算でPd(II)-O-Au(0)よりさらに高効率にC-H結合活性化可能な活性種を提案し実際にその合成・反応を試みている。 関連して、酸化物とナノ粒子の相互作用を利用し、(3)アルデヒドのC-H結合切断を伴うCeO2担持Ni(0)ナノ触媒による脱カルボニル反応、(4)1,2-ジケトンのCeO2担持Au-Pdナノ粒子触媒による脱カルボニル反応、を開発した。さらに、固体表面における複合化によるC-H結合官能基化反応の関連研究として、(5)担持Pdナノ水酸化物とヒドロキシイミドの複合化によるアミドのα酸素化反応等も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
様々なキャラクタリゼーションと対照実験等から、Auナノ粒子-Pd酸化物クラスター複合触媒をCeO2担体上に実際に合成できたことが明らかとなり、一度Au-Pd合金ナノ粒子が生成した後に水中でCeO2担体で活性化された酸素がPdのみを酸化するという形成メカニズムであることも示唆された。すなわち、合金化の後に片方の金属種のみを酸化することができれば、他の金属種・他の担体上であっても同様のナノ粒子-酸化物クラスター複合触媒を合成できる可能性が高いことが明らかとなった。加えて、DFT計算を組み合わせることで、Auナノ粒子-Pd酸化物クラスター複合触媒ではその界面となるPd(II)-O-Au(0)が脱水素の活性点構造となり、ルイス酸-ブレンステッド塩基ペアがカルボニル化合物を協奏的に活性化しC-H結合活性化を効率的に促進していることも示唆された。この触媒のC-H結合活性化能は、配位子が塩基として作用して5配位の遷移状態を取る既報の均一系Pd錯体触媒と比較して、シクロヘキサノン基質で40倍以上高い。したがって、ナノ粒子-酸化物クラスター複合触媒が、錯体分子触媒とは大きく異なる配向基を用いないC-H結合活性化の新たな活性点として機能することを実証できたと言える。以上のように、ナノ粒子-酸化物クラスター複合触媒の合成におけるさらなる金属種・担体への拡張の可能性は高く、ナノ粒子-酸化物クラスター複合触媒特有のC-H結合活性化の実証もできたことから、本研究は順調に進展している。加えて、当初の目的以外の高難度分子変換として、ナノ粒子-酸化物クラスター複合触媒に着目して得られた酸化物とナノ粒子の相互作用の知見や固体表面における複合化の知見を活用し、選択的なアルデヒドや1,2-ジケトンの酸化的付加を経る脱カルボニル反応、アミドのα酸素化反応等にも成功しており、当初の計画以上の進展ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に得られた知見をもとに、ナノ粒子-酸化物クラスター複合触媒の合成におけるさらなる金属種・担体への拡張を行う。実験的に触媒を合成し、触媒反応に適用することも必須だが、高効率なC-H結合活性化を示すナノ粒子-酸化物クラスター複合触媒を計算化学的に提案することも取り入れつつ、実験と計算を相互にフィードバックしながら効率的により高性能なナノ粒子-酸化物クラスター複合触媒を設計していく。ターゲット反応としては、特に、未踏のアミドやエステルの酸素分子を酸化剤とした酸化的脱水素や、これまでの手法では困難な位置選択性のC-H結合官能基化といった、より高難度な分子変換を目指す。また、CeO2担持PdOx-on-Auナノ粒子触媒の合成法の応用だけでなく、ポリオキソメタレートのようなアニオン性酸化物クラスターをナノ粒子に修飾した触媒を新たな高効率C-H結合官能基化に適用していくことも検討する。
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Research Products
(20 results)