2023 Fiscal Year Annual Research Report
リン脂質ポリマーの精密重合に基づく高機能性磁性ナノ粒子の創製とその医療応用
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21K14469
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金子 真大 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60881191)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リン脂質ポリマー / 磁性ナノ粒子 / 表面開始重合 / 原子移動ラジカル重合 / 温熱療法 / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、犠牲開始剤を用いた表面開始原子移動ラジカル重合法により、10量体、50量体、100量体のpoly(MPC)(PMPC)層をマグネタイトナノ粒子(MNPs)表面に構築した。マクロファージに対するステルス性と腫瘍担持マウスへの静脈注射時の腫瘍送達量の評価から、100量体のPMPC層を持つMNPs-PMPCがステルス性と腫瘍送達量に優れることを明らかにした。本年度は、より長い鎖長のPMPC層が粒子機能に与える影響を検討するため、犠牲開始剤を添加せずにMNPs-PMPCを合成した。その結果、100量体のPMPC層を持つMNPs-PMPCに比べ、マクロファージへの取り込み量が2分の1程度に減少し、腫瘍への送達量は2倍以上向上した。 さらに、悪性乳がんの表面に発現するHER2タンパク質をターゲットとし、HER2の分子標的薬であるトラスツズマブを用いた腫瘍へのターゲティングを試みた。100量体のPMPC層を持つMNPs-PMPCに対してポリマーの末端変換を行うことで、粒子表面にトラスツズマブを担持したMNPs-PMPC-Tmabを作製した。HER2陽性乳がん細胞株SK-BR-3に対して添加したところ、抗体を担持していない粒子に比べて細胞内への取り込み量が増加した。SKBR3細胞に対して、交流磁場照射によりin vitroで温熱治療を行ったところ、MNP-PMPC-Tmabを用いた系ではトラスツズマブを担持していない粒子に比べより大きく細胞の生存率が低下した。これは、MNP-PMPC-Tmabの細胞取り込み量の増加に伴い、より強力に細胞内が加温されたことで殺細胞効果が向上したためだと考えられる。以上の結果から、MNP-PMPC-Tmabを用いたHER2陽性乳がんの温熱治療の有効性が示唆された。
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