2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K14475
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
細見 拓郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (40830360)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノ構造 / 自己組織化分子膜 / 揮発性有機化合物 / 分子吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、分子センサチャネルである金属酸化物表面に自己組織化単分子膜(SAM)を修飾し、その表面に対する揮発性有機化合物(VOC)の吸着状態を分光測定によって追跡することで、(i)SAM構成分子間の空隙構造にVOCが取り込まれること、および(ii)取り込まれたVOCが金属酸化物表面反応を引き起こすこと、を実証し、それらの現象を利用することで、(iii)SAMによる構造選択的なVOC取り込みを実現する、という3項目によって実施された。前年度までに、SAMの完全重水素化というアプローチを新規に開発することで、金属酸化物表面に強く吸着する分子(カルボン酸)において(i)および(ii)の実証に成功している。当該年度では、これらの知見を(iii)へと応用するために、金属酸化物表面に強く吸着しない分子においても(i), (ii)の実証を試みた。その測定を可能とするために、VOC含有ガス下におけるin-situ赤外分光測定装置を新たに設計した。これによって、実際のセンシングと同様にSAM修飾表面に気相分子が曝露された状態での分光的な表面観察を行うことが可能になった。結果として、ノナンをはじめとする単純アルカンにおいても、重水素化SAMへの取り込みに伴うSAM骨格のトランス化の観測に成功した。さらに、枝分かれ構造の異なるアルカン異性体において、このSAMトランス化現象の程度が著しく異なることを見出した。SAM間のわずかな空隙内にアルカン分子が貫入するために、その立体的なかさ高さが重要となったためと考えられる。これらの無置換アルカンは選択性の鍵となる反応性の乏しさから、異性体識別が特に困難とされてきた化合物群である。本研究では、SAMの作り出す多空隙構造と分子貫入に伴うSAMの振動吸収挙動変化を利用することで、これらの異性体の識別に成功した。
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Research Products
(6 results)