2022 Fiscal Year Research-status Report
脂質キュービック相の高分子化による構造安定化と膜タンパク質との複合化
Project/Area Number |
21K14478
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
尾本 賢一郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任助教 (40820056)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂質キュービック相 / 有機-無機ハイブリッド / リオトロピック液晶 / 超分子化学 / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜タンパク質を天然の状態のまま取り込めるバルク材料として脂質二分子膜と水チャネルからなるリオトロピック液晶「脂質キュービック相」が注目されている。本研究ではアルコキシシリル基を親水性頭部に有する有機ケイ素脂質を合成し、それらをゾル-ゲル反応により縮合させることで、シロキサンネットワークにより被覆された脂質二分子膜を有する有機-無機ハイブリッド型の「架橋脂質キュービック相」の構築を目指し、その膜タンパク質固定化媒体としての活用可能性の追求を目標としている。 これまでに、合成した有機ケイ素脂質が、含水条件におけるゾル-ゲル反応の進行に伴い、ラメラ相やキュービック相をはじめとしたさまざまな液晶構造を時間発展的に形成することが確認されている。本年度はまず、シリンジカップラーを用いた水-脂質の混合過程を取り入れ、脂質-水混合物の均一性を向上させることで、「架橋脂質キュービック相を」再現性よく構築するための手法の最適化を行った。また、有機ケイ素脂質が示すゾルゲル反応により生成する脂質オリゴマーの構造について質量分析と固体SiNMRを活用して評価した。結果として、重合反応により形成される脂質オリゴマーとして、有機ケイ素脂質を繰り返し構造とした分岐状オリゴマーが主生成物として形成され、それらが「架橋脂質キュービック相」の構成要素となっていることが示唆された。今後、「架橋脂質キュービック相」が示す相転移挙動などを評価することで、シロキサンネットワークが構造中の脂質の物性に与える効果を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究を通じサンプル調製法を最適化することで、「架橋脂質キュービック相」を再現性よく構築するための手法を確立することができた。また、質量分析・固体SiNMR測定を通じて、ゾル-ゲル反応により形成される脂質オリゴマーの構造に関する知見を得ることができた。これは「架橋脂質キュービック相の」ナノ構造の安定性を議論する上で有用である。一方で、「架橋脂質キュービック相」の物性評価と膜タンパク質やそれをモチーフとした人工分子との複合化の達成には未だ至っていない。よってやや遅れていると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、「架橋脂質キュービック相」が示す相転移挙動などを温度可変X線回折や熱分析を用いて評価することで、シロキサンネットワークが構造中の脂質の物性に与える効果を評価する。また「架橋脂質キュービック相」の構築後は、膜タンパク質やそれをモチーフとした人工分子との複合化を検討する。
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Causes of Carryover |
「架橋脂質キュービック相」を形成するための条件検討と適化に時間を要したため、その物性の評価や膜タンパク質やそれをモチーフとした人工分子との複合化に関しては翌年度に実施する必要が生じた。翌年度分として請求した助成金は、これらの実験に必要な経費(試薬・消耗品代、測定料)のほか、研究成果の論文投稿に必要な追加実験の実施や学会参加、論文投稿などの費用に使用する計画である。
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Research Products
(7 results)
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[Book] Soft Crystals2023
Author(s)
Yoshinori Yamanoi, Kenichiro Omoto, Toyotaka Nakae, Masaki Nishio (Ed. Masako Kato, Kazuyuki Ishii)
Total Pages
265
Publisher
Springer
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