2023 Fiscal Year Annual Research Report
脂質キュービック相の高分子化による構造安定化と膜タンパク質との複合化
Project/Area Number |
21K14478
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
尾本 賢一郎 長崎大学, 工学研究科, 助教 (40820056)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂質キュービック相 / 有機-無機ハイブリッド / リオトロピック液晶 / 超分子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜タンパク質を天然の状態のまま取り込めるバルク材料として、脂質二分子膜と水チャネルからなるリオトロピック液晶「脂質キュービック相」が注目されている。本研究では安定な膜タンパク質の固定化媒体となりうる高分子材料の開発を指向して、アルコキシシリル基を親水性頭部に有する有機ケイ素脂質を合成し、それらをゾル-ゲル反応により縮合させることで、表層がシロキサンネットワークにより被覆された脂質二分子膜を有する有機-無機ハイブリッド型の「架橋脂質キュービック相」の構築を目指した。 2021~2022年度までに、合成した有機ケイ素脂質が、含水条件におけるゾル-ゲル反応により有機ケイ素脂質を繰り返し構造とした分岐状オリゴマーを生成し、「架橋脂質キュービック相」を時間発展的に形成することを、質量分析や固体Si NMR測定、エックス線散乱測定により明らかにしてきた。本年度は、温度可変エックス線散乱測定により、得られた「架橋脂質キュービック相」の構造の温度依存性を評価した。結果として、降温・昇温過程において、サンプルがラメラ構造 (低温側)・キュービック構造 (高温側) の間で可逆に構造変換することが確認された。この結果は、有機ケイ素脂質のゾル-ゲル反応の生成物が、大きなポリマーではなく小さなオリゴマーであり、それがラメラ-キュービック間での構造変換を示すのに十分なだけの分子移動性・構造柔軟性を有することを示す。本研究を通して得られた「架橋脂質キュービック相」の構築法に関する知見をもとに、有機ケイ素脂質の分子設計やゾル-ゲル反応の条件を最適化し脂質オリゴマーの重合度を向上させることで、安定な膜タンパク質の固定化媒体として活用可能な高分子材料の構築が実現できると期待できる。
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Research Products
(3 results)