2021 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子の配列制御による直流-交流動作ハイブリッド型トンネルリング薄膜の創製
Project/Area Number |
21K14482
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 英恵 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60733920)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノ複相膜 / トンネル磁気抵抗効果 / トンネル磁気誘電効果 / 形状磁気異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、直流-交流動作ハイブリッド型トンネリング薄膜材料を実現することを目的として、膜の面内方向に密に粒子が配列する(A)横粒子層状膜、ならびに膜の面直方向に密に粒子が配列する(B)縦粒子柱状膜の作製と直流-交流トンネル効果の評価および発現機構の解明を行う。2021年度は、強磁性が期待されるCo扁平ナノ粒子と高抵抗化が期待されるBaF2マトリクスからなる(A)横粒子層状膜の作製に成功した。膜面垂直方向の扁平粒子の間隔を、0.3-2.1nmの間で変化させることに成功し、いずれの障壁厚みにおいても直流のトンネル磁気抵抗効果が得られるが、交流のトンネル磁気誘電効果は膜面垂直方向の粒子間隔が0.8-1.5nmの間でのみ発現することを見出した。また、扁平粒子はその形状磁気異方性から、球形粒子の場合よりも面内の飽和磁界が小さくなり、磁界に対するトンネル効果の検出感度が改善した。 2022年度の(B)縦粒子柱状膜についても前倒しで進め、Co-SiO2系膜において、アスペクト比が最大6.0(縦長さ/横粒子径)の膜面垂直方向に長い楕円粒子の作製に成功した。その中でナノ粒子の形状に起因した大きな異方性磁界Hk~6kOe(15Kにおいて)が見出された。現在、磁性元素が希薄な(<30 at.%)系で大きな磁気異方性が得られることに関して理論的な考察を進めている。 また、縦横両方の直流トンネル磁気抵抗効果の評価系を確立した。その結果、垂直方向に密である(粒子間隔が狭い)と予想されたCo-SiO2系縦粒子柱状膜の垂直方向の電気抵抗は想定した値より低く、膜面垂直方向の楕円粒子の間隔は広いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度に予定していた扁平粒子が層状に配列する(A)横粒子層状膜の直流-交流トンネル磁気抵抗(TMR)および誘電効果(TMD)については、1)異種材料を交互に積層成膜するタンデム法を用いて膜中の磁性ナノ粒子が扁平化する成膜条件を明らかにできたこと、2)TMR・TMD効果が得られる層厚の範囲を明らかにすることで、直流-交流トンネルリング薄膜材料の構造最適化に成功し、最大で8%のTMR, 4%のTMDが得られた。また面内および面直両方のTMRの測定系(磁界印加は面内)も確立できた。 2022年度に行う予定であった(B)縦粒子柱状膜については、Co-SiO2系膜で粒子のアスペクト比6.0(縦長さ/横粒子径)を実現し、大きな形状磁気異方性を付与できた。 以上の結果により、論文2報が採録され、本課題に関連した一件の受賞があったため、研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
縦長粒子を含む(B)縦粒子柱状膜は、当初膜面垂直方向の密度(粒子間隔)が小さくなると予測したが、電気特性から必ずしも縦方向の粒子間隔が小さくなるわけではないことが示唆された。一方で扁平粒子からなる(A)横粒子層状膜は、面直粒子間隔を0.3-2.1nmまで制御できるが、面内粒子間隔は0.5-1.0nmの範囲であることから、構造制御により面内面直どちらも粒子間隔の小さい(大きい)状態を実現でき、縦横に柔軟性のある直流―交流ハイブリッドトンネリング膜の創製に有効であることが示唆された。このことから、2022年度は特に横扁平粒子を用いた直流―交流ハイブリッドトンネリング膜の特性向上を検討したい。
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Research Products
(8 results)