2022 Fiscal Year Research-status Report
Large-scale heterostructures of atomic layer materials
Project/Area Number |
21K14484
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
丸山 実那 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00802951)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 原子層物質 / vdWヘテロ構造 / 面内ヘテロ構造 / バッキーボウル |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、原子層物質と炭化水素分子からなる複合系の物質設計と物性解明を行なった。 原子層物質であるグラファイトは、炭素からなる蜂の巣ネットワークが弱い相互作用を介して凝集している。このため、シートとシートの層間に原子、イオン、分子の挿入が可能である。挿入物とグラファイトからなる複合系はグラファイト層間化合物と呼ばれ、挿入物や階層構造に依存した超伝導などの特異な物性を示すことが知られている。すなわち、グラファイト層間化合物は挿入物を制御することで多様な電子構造を示すことが期待される。そこで、本研究では最薄グラファイト層間化合物である、二層グラフェンの層間へお椀型炭化水素分子が挿入された新奇複合構造体のエネルギー論と電子状態を明らかにした。ここでは、挿入物として、お椀型炭化水素分子の一つであるコラニュレンに着目した。コラニュレンはお椀の縁が水素で終端されていること、ならびにお椀構造をとることに起因して、分子鉛直方向に双極子モーメントを有する。コラニュレンが挿入された二層グラフェンでは、分子の双極子モーメントによって上下グラフェン間での電荷移動が誘起され、お椀の縁側のグラフェン層へ電子、お椀の底側のグラフェン層へホールの再分布が生じる。このことは、分子の配向による電子/ホール共ドープの制御が可能であることを示している。二層グラフェン間に挿入された分子の配向を制御することで、分子配向の違いによる面内ヘテロ構造の形成が可能である。この超格子構造では、分子配向を制御することで各グラフェン層にp/n境界の構築が実現される。すなわち、異なる原子層物質が組み合わさった面内ヘテロ構造と等価な電子系を、分子配向制御によって原子層物質と分子の複合系において実現可能であることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度では、原子層物質の柔軟性由来の新奇ナノ構造の探索を行なった。同時に、その構造由来の電子構造の解明を行なった。したがって、当初計画していた原子層物質からなる新奇ナノ構造の探索と物性解明に着手したため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度までに明らかにしてきた原子層物質からなる新奇ナノ構造体をもとに、さらなる新奇ナノ構造の探索を行なっていく。同時に、新奇ナノ構造を有する原子層物質の電子状態を明らかにする。 現在考えている新奇ナノ構造は、お椀型炭化水素分子が本来有する凝集構造と原子層物質からなる複合構造や、湾曲した遷移金属カルコゲン化合物を構成単位とした面内ヘテロ構造である。これら新奇ナノ構造体のエネルギー論と電子状態を明らかにしていく。
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Research Products
(20 results)