2021 Fiscal Year Research-status Report
シリコン電子スピン量子ビットの高精度トンネル輸送技術の確立
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21K14485
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
米田 淳 東京工業大学, 超スマート社会卓越教育院, 特任准教授 (60734366)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子ビット / 量子ドット / 単一スピン / トンネル効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、電子スピンのトンネル過程におけるスピンコヒーレンスの喪失機構を解明し、スピンの量子状態がよく保存されるための条件を明らかにすることを目的としている。ただし、スピンの量子状態の保存とは、偏極成分だけでなく、位相成分も含めた保存のことを指す。このため、そもそもスピンの位相情報が失われにくく、かつ電気的操作性の高いシリコン量子ドットにおいて、トンネル輸送が位相情報に与える影響を評価し、さまざまな過程がトンネル精度に与える影響の解明に取り組んだ。 まず、トンネル輸送を制御する電極電圧パルスの掃引時間を変化させた際の位相情報保持率を詳細に解析することで、以下の結論を得た。輸送されるドット間のトンネル結合を100GHz程度と大きくすると、ナノ秒スケールにおいて、電圧パルス掃引時間に指数関数的に依存するような非断熱トンネルの影響を抑制することが可能である。位相情報の喪失率のうち電圧パルス掃引時間に比例する成分が存在し、この原因として電荷雑音の影響が考えられる。これらの知見を踏まえて、トンネル領域における電子スピンの位相保持時間を詳細に調べたところ、トンネル共鳴条件からの離調に対する依存性が、量子ドットデバイスに働く1/fの電荷雑音と、電子スピンの歳差周波数の電荷雑音感度を考慮することで説明できることを見出した。 以上の結果に加えて、量子状態を保存したトンネル過程を、電子スピン量子ビットの結合性を高める機構として、具体的な量子ビットアレイ構造において活用する方法に関して、検討、提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シリコン電子スピン量子ビットのトンネル輸送が高い忠実度で実行可能な条件を解明でき、このような技術を高精度なトンネルを活用したシリコン量子コンピュータのアーキテクチャに関する検討についても、研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に加えて、スピンのトンネル精度に対する電荷雑音の影響が明らかとなっているため、これを低減させるべく、トンネル結合の影響や、電荷雑音の機構の解明に取り組みたい。また、量子ビットのトンネル輸送を具体的な量子ビットアレイ構造において活用する方法を、さらに発展させることを考えている。
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Causes of Carryover |
研究の進展に伴い、当初予期しえなかった高精度トンネル輸送に関する新たな知見が得られた。この知見に基づいてより高度な研究成果を得るために、装置仕様の一部再検討を行った。これにともなって研究計画を一部変更し、来年度にこの知見を活用した研究を行うこととした。
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[Journal Article] Coherent spin qubit transport in silicon2021
Author(s)
J. Yoneda, W. Huang, M. Feng, C. H. Yang, K. W. Chan, T. Tanttu, W. Gilbert, R. C. C. Leon, F. E. Hudson, K. M. Itoh, A. Morello, S. D. Bartlett, A. Laucht, A. Saraiva and A. S. Dzurak
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 12
Pages: 4114-1-9
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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