2022 Fiscal Year Research-status Report
高効率かつ高速で放射線を検出する金属錯体ナノ粒子分散系のシンチレータ開発
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21K14492
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 龍樹 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90805285)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 金属錯体 / ナノ粒子 / シンチレーションスペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
固体で高い発光量子を持つテトラフェニルエチレン誘導体1,1,2,2-Tetrakis(4-(pyridin-4-yl)phenyl)ethene (TPPE) を配位子として持つ亜鉛錯体Zn(TPPE)を対象化合物とし、ナノ粒子化を検討した。Zn(TPPE)は、激しく攪拌したTPPE-トルエン溶液にZnCl2-メタノール溶液を滴下し、その後、2時間室温で静置することで得た。生成物の元素分析から塩素が検出されたことから金属錯体を形成していることを確認した。また、Zn(TPPE)は40 nm程度の球形粒子として生成したことを走査型電子顕微鏡像から確認し、また粉末法X線回折(pXRD)パターンはハロパターンであったことからアモルファス性であることがわかった。得られたZn(TPPE)ナノ粒子は466 nmに極大発光波長を持ち、その発光量子収率は75%と高輝度発光を示すことがわかった。また、X線(Moターゲット, 80 kV, 1.2 mA)励起によるシンチレーションスペクトルでは、あまり良好なスペクトルは得られず、ナノ粒子の凝集により効率的な発光が得られなかったことが原因と考えた。そこで、得られた亜鉛錯体ナノ粒子のポリマー分散を検討した。1 mM Zn(TPPE)ナノ粒子のトルエン分散液(2 mL)にポリスチレン(0.5 mg)を溶解させ、その混合溶液を型に入れ70 ℃で72時間保持し、トルエンを留去した。得られたZn(TPPE)ナノ粒子分散スチレンポリマーの発光スペクトルはトルエン分散液のスペクトルと同様に得られ、またシンチレーションスペクトルも良好に得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発光量子収率の高いナノ粒子化に成功し、さらに高分子中へと分散することでシンチレーションスペクトルの取得に成功しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
シンチレーション効率を測定するために、波高スペクトルの取得を目指す。そのためには、より高濃度に分散する、また効率的な発光を行うため、放射線を効率的にエネルギー移動させることを目的とした第一溶質の添加等も検討し、高い発光効率と早い応答速度を併せ持つシンチレータ材料を創出する。
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Causes of Carryover |
当初の予定に反し、作製した金属錯体ナノ粒子のシンチレーションスペクトルの強度が弱かった。研究遂行上、より強度の大きいシンチレーションスペクトルを得る必要があり、そのための材料設計を見直す必要が生じた。 翌年度は、高分子マトリクスとするための材料やシンチレーションスペクトルを効率的に得るための材料に当該年度の予算を当て、当初予定してた翌年度予算は、シンチレーション測定や波高スペクトルを含む各種計測や、また学会のための旅費、論文作成に関わる費用、薬品やガラス器具など消耗品として使用する。
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