2021 Fiscal Year Research-status Report
Band gap formation in graphene by strain-induced gauge field
Project/Area Number |
21K14493
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
友利 ひかり 筑波大学, 数理物質系, 助教 (30740667)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グラフェン / ひずみ / 電気伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究テーマである格子ひずみを用いたグラフェンへのバンドギャップ形成において、2021年度は特に周期ひずみに着目して研究を進めた。 これまでのグラフェンへの周期ひずみ導入方法では、あらかじめ凹凸構造を形成した基板上にグラフェンを転写し、電極接続とひずみ導入を同時に行っていた。しかし、この方法で作製したグラフェンFET試料では、グラフェンの電流経路上に接続された金属電極の影響を除去するのが困難であった。そこで今回はさらに反応性イオンエッチングのプロセスも取り入れ、ひずみ導入と同時に電極接続・グラフェンの形状加工を行う方法を模索した。 また、グラフェンに導入するひずみ構造として、2021年度から1次元の周期ひずみだけではなく、二次元周期ひずみの取り扱いも始めた。二次元周期ひずみの導入では、電子線リソグラフィーによりシリコン基板状に80nm周期の三角格子ドットを形成し、その上にグラフェンを転写することで三角格子状に分布した周期ひずみを導入した。2021年末までにテスト試料の低温測定を行っている。 さらに上記の研究を遂行するための周辺技術として、光学顕微鏡を用いた原子層膜の層数判定方法の改良を行った。これまでの光学顕微鏡を用いた層数判定方法では、基板と原子層膜の明るさのコントラストから層数を判定していたが、光学顕微鏡像の明るさのばらつきによって層数判定の正確性が損なわれていた。そこで2021年度は光学顕微鏡像の明るさのばらつきを取り入れた層数判定方法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・共用施設所有の電子線描画装置の不調により2021年夏から秋にかけて100nm以下の微細な周期構造の形成ができなくなった。ユーザーで操作できる範囲で装置の調整を行い、それに伴う微細構造形成の条件出しのやり直しによりサンプル作製に時間がかかったものの、現在は安定したサンプル作製が可能になった。このような時間のロスを無くすために、2021年冬から近隣にある他の共有施設の併用を進めた。 ・二次元周期ひずみを導入したグラフェンにおいて室温から低温までの電気伝導測定を行った。この測定では一枚のグラフェンにおいてひずみのない領域とある領域を形成し、電気伝導特性の比較をすることができた。 ・光学顕微鏡像の明るさのばらつきを取り入れた層数判定方法を開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究を踏まえ、電気伝導測定において周期ひずみの効果を観測するために、ひずみ周期構造の微細化とグラフェン中の電子の平均自由行程の増大を目指す。 【ひずみ周期構造の微細化】グラフェンを転写する基板状に周期20nmを切る凹凸構造を形成する。また、基板の種類や表面状態を変えることによってひずみ量自体の増大にも取り組む。 【グラフェン中の電子の平均自由行程の増大】六方晶窒化ホウ素薄膜をサンプル構造に取り入れることによって、基板や荷電不純物による電子の散乱を抑制する。
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Causes of Carryover |
研究室に配分される予算や科研費が減少し、次年度以降の研究継続のために次年度使用額が生じた。年間の支出の大部分は共用施設利用費と低温寒剤代金で、最低限の実験(年3回の低温測定)を行うには100万円程が必要になる。2021年度に予定していた薄膜転写用の自動ステージの購入を延期し、2021年度の予算に繰り越した。
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