2021 Fiscal Year Research-status Report
蛍光性高飽和磁化ナノ粒子を用いたリソソームの迅速単離技術の開発
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21K14506
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 麻里 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70868413)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 磁性材料 / プラズモニック材料 / 高飽和磁化 / 磁気分離 / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、細胞内オルガネラの一種であるリソソームの迅速且つ簡便な単離を目指し、磁性-プラズモンハイブリッドナノ粒子(MPNPs)をプローブとしたリソソームの磁気分離を行った。プローブとして理想的なMPNPsは、①永久磁石で容易に磁気分離可能、②直径30 nm以下、③光学顕微鏡でイメージング可能、④水系で安定的に分散、⑤低細胞毒性、⑥表面に所望の生体分子を自在に結合可能という要件を満たさなくてはならない。本研究では粒径15 nmのMPNPs(Ag/FeCo/Agコア/シェル/シェルナノ粒子)をPEG-リン脂質でカプセル化することで、水中で安定な粒子を作製することに成功した。アミノデキストランは細胞に取り込まれた後、リソソームへ輸送されることが知られている分子であり、MPNPsの表面をアミノデキストランで修飾し、COS-1細胞へ取り込ませたところ、MPNPsが初期エンドソーム→後期エンドソーム→リソソームと順に輸送されることを共焦点顕微鏡により確認した。そして、MPNPsがリソソームに十分に濃縮されたタイミングで磁気分離(MS-column, Miltenyi Biotec)を行った。細胞破砕過程から磁気分離が完了するまでに用した時間は30分でありオルガネラの分離に利用される一般的な手法である密度勾配遠心分離法(数時間)より短かった。磁気分離分画をウエスタンブロットにより評価したところ、ミトコンドリアやゴルジ体など他のオルガネラによるコンタミがなく、純度高くリソソームを回収することに成功した。比較として、密度勾配遠心分離法によりリソソームを分離したところ、磁気分離法の方が純度高くリソソームの回収が可能であることを確認した。MPNPsのリソソームへの輸送時間は細胞の種類に依存するが、本手法ではどのような種類の細胞でも、リソソームの分離が可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の当初の予定は、高飽和磁化Fe/FexOyナノ粒子の合成・生体分子による表面修飾・細胞内での粒子の輸送経路を顕微鏡で観察することであった。Fe/FexOyナノ粒子の作製は進捗が遅れているが、別の磁性体Ag/FeCo/Agコア/シェル/シェルナノ粒子を代用することで、粒子表面の親水化、細胞内での粒子の輸送経路の追跡、リソソームの磁気分離、更には分離したリソソームのアミノ酸の分析を行うことに成功している。磁気分離条件の検討は当初2022年度に実施することを予定していたが、Ag/FeCo/Agナノ粒子を用いて前倒しすることができた。Ag/FeCo/Agナノ粒子の飽和磁化はFe/FexOyナノ粒子よりも劣るが、それでも細胞破砕後30分以内にリソソームを分離することができた。2021年度に確立した顕微鏡観察およびリソソーム磁気分離の手法は、今後Fe/FexOyナノ粒子をプローブとして用いる際に活用することができる。従って、全体の流れを考えると、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はFe/FexOyナノ粒子の合成及び生体分子による表面修飾、およびシンクロナイズドエンドサイトーシスによる細胞内への導入検討を行う。シンクロナイズドエンドサイトーシスでは、細胞表面に吸着した粒子がエンドサイトーシスにより取り込まれるタイミングを揃えることができる。2021年度では、Ag/FeCo/Agナノ粒子の輸送時間(初期エンドソーム→後期エンドソーム→リソソームへ輸送される時間)を同期することができなかった。2022年度はFe/FexOyナノ粒子とシンクロナイズドエンドサイトーシスおよび2021年度に確立した顕微鏡観察、磁気分離手法を利用することで、より高純度なリソソームの分離を目指す。同時にAg/FeCo/Agナノ粒子により分離したリソソームのプロテオーム解析を予備実験として行う。予備実験では、リソソーム病遺伝子として知られるCLN3をノックアウトしたHEK293細胞と正常なHEK293細胞からリソソームを分離して、タンパク質の組成変化をプロテオーム解析により比較することを行う。
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Research Products
(6 results)