2023 Fiscal Year Research-status Report
蛍光性高飽和磁化ナノ粒子を用いたリソソームの迅速単離技術の開発
Project/Area Number |
21K14506
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 麻里 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70868413)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ナノ粒子 / 磁性材料 / プラズモニック材料 / 高飽和磁化 / 磁気分離 / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度では、野生株のマウス胎児線維芽細胞(MEF細胞)とリソソーム病の一つであるニーマンピック病C1に関連するタンパク質NPC1をノックアウト(KO)したMEF細胞に磁性―プラズモンハイブリッドナノ粒子を導入し、それぞれの細胞からリソソームを磁気分離する予定であった。ナノ粒子は、2022年度にHEK293細胞とCOS-1細胞からリソソームを分離した際に使用した粒子を用いることを考えた。粒子の表面はPEG化リン脂質で被覆されており、その表面に任意のタンパク質を修飾することが出来る。野生株に対し、上皮成長因子(EGF)を修飾したナノ粒子をシンクロナイズドエンドサイトーシスにより取り込ませようとしたところ、低温ではEGFの活性が低下し、受容体への結合効率が下がるためか、取り込みが確認できなかった。また、様々な条件でナノ粒子の導入実験を行ったところ、ナノ粒子のMEF細胞に対する毒性が顕著であることが分かり、細胞種をA549細胞に変更した。A549細胞はNPC1がKOされた細胞が市販されている。2021年度~2022年度の結果から、PEG化リン脂質で被覆された粒子はCOS-1細胞やHEK293細胞に容易に取り込まれることが分かっていたが、A549細胞の場合はPEG化リン脂質で被覆された粒子の取り込みは確認されなかった。そこで、ポリリジンのみをナノ粒子の表面修飾剤として用いたところ、A549細胞のリソソームへ粒子を送達することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、2023年度中に磁気分離に着手し分離条件の検討に入る予定であったが、ナノ粒子を細胞内リソソームへ送達するための条件検討に時間がかかり、磁気分離に着手することができなかった。ナノ粒子が細胞内に取り込まれない原因を調べるために、想定以上の時間を費やしたが、細胞種の変更やPEGを用いない粒子表面修飾剤を使用することでこれらの問題は解決できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はA549細胞において、ナノ粒子がリソソームに濃縮される培養時間を2022年度に報告した手法(ACS Nano 16 (2022) 885)に則り求める。具体的には、粒子導入後、任意の時間(1、3、5、7時間など)培養し、初期エンドソーム、後期エンドソーム、リソソームとナノ粒子の局在を共焦点レーザー顕微鏡で確認する。培養時間を延ばすことでナノ粒子は初期エンドソーム→後期エンドソーム→リソソームへと送達されるため、リソソームのみにナノ粒子が局在する培養時間をMander’s Correlation係数を使った画像解析により調べる。更にNPC1をKOしたA549細胞においても同様にリソソームに粒子が濃縮される培養時間を調べる。その後、野生型とKO細胞からリソソームの磁気分離を行う。磁気分離の方法も2022年度に報告した手法に則り、磁気カラムを用いて温和にリソソームのみを分離する。磁気分離の成否の確認をウエスタンブロットで行う。分離したリソソームの構造が破壊されていないかは、市販のキットで活性を調べることで評価する。最後に、プロテオーム解析(外部委託)に供し、野生型とKO細胞でタンパク質の種類や分布に違いがないかを調べる。
|