2022 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of the counterion binding at soft interface controlled by ion hydration and interfacial curvature
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21K14507
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今井 洋輔 九州大学, 基幹教育院, 助教 (90738816)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 界面単分子膜 / カルシウム対イオン / 界面での水和構造 / 対イオン結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究の目的は、界面活性物質がつくる界面吸着膜やミセル、2分子膜ベシクルなどの曲率の異なる分子集合体への対イオン結合の分子メカニズムを明らかにすることである。 今年度は、アルキルベンゼンスルホン酸塩が平らな水溶液表面で形成する吸着膜を対象として、膜中でのスルホ基(SO3-)とカルシウム対イオン(Ca2+)間の結合や相互作用について、Caの水和構造の観点から調査を行った。 高エネルギー加速器研究機構PF-BL7Cにて、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム-塩化カルシウム混合水溶液表面を対象に、Ca原子を標的とした全反射XAFSを実施した。吸着膜に結合したCaとバルク溶液中のCaで、XAFSスペクトルの形状が異なることが明らかとなった。これより、バルク溶液中では完全水和しているCaイオンが、吸着膜のSO3基と結合する際、何らかの水和構造の変化が起きていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題に適した界面活性剤を見つけることが出来たため。Caの様な多価カチオンを対イオンにもつ陰イオン界面活性剤は、強い静電相互作用のため、極低濃度で固体として析出するものがほとんどであり、表面張力測定や界面構造科学的測定の適用が困難であった。今回試したアルキルベンゼンスルホン酸塩では、その親水頭部の嵩高さのため、溶解度はmMオーダーであり、さらにNaなどの混合により、曲界面をもつミセル形成も期待できる。また、今回の成果により、CaとSO3のイオン対の水和構造もXAFSで評価できる目途が立った。この界面活性剤は工業的にも広く使われていることから、安価でかつ精製方法も確立されており、界面化学的純度の試薬が準備し易いことも研究進捗の助けとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られた結果の解析により、SO3基とCaイオンが脱水和を伴い直接結合しているのか、水和を保ったまま結合しているのか、またその結合度等を評価する予定である。さらに、界面の曲率の効果の解明を目的に、溶液中のミセルに結合したCaイオンの水和構造を評価するため、九州シンクロトロン光研究センターBL-06にて透過および蛍光XAFSを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進行に合わせて、当初予定していた備品の購入を次年度に持ち越した。予定通り購入するか、あるいは他の備品の方が課題の遂行に適しているか判断して使用する。
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