2023 Fiscal Year Annual Research Report
量子井戸効果を用いたスピン軌道トルクの制御:電流―スピン流変換の新しい自由度
Project/Area Number |
21K14523
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
杜 野 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 量子機能創製研究センター, 主任研究員 (70795319)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スピン軌道トルク |
Outline of Annual Research Achievements |
電流誘起スピン軌道トルク(SOT)は磁性材料の磁化を電気的な手法で制御できることから、不揮発性省電力磁気メモリへの応用性が期待されている。従来のSOT素子は、重金属材料の高い電流-スピン流変換効率を利用して磁性材料の磁気スピンを制御する。しかし、SOT素子の実用化には磁化制御のさらなる高効率化によるエネルギー損失の削減が必要とされる。 本研究は、電流誘起SOTによる磁化制御の高効率化に向けた新たなアプローチとして、高電気伝導率な磁性金属/非磁性金属ヘテロ構造における量子閉じ込め効果を利用したSOT制御の可能性の解明を目的とする。 実験について、マグネトロンスパッタ装置により酸化物基板上に成膜した(001)磁性金属/非磁性金属ヘテロ構造をフォトリソグラフィー法により加工してホール素子を作製し、ハーモニックホール法により電流誘起SOTを測定した。その結果、SOTの強さ及び符号が非磁性層の膜厚に応じて周期的に振動するように変化することを見いだした。さらに、磁性金属/非磁性金属/磁性金属ヘテロ構造の磁気特性を磁気カー効果で調べた結果、ヘテロ接合の飽和磁場とSOTの振動周期がほぼ一致することが判明した。 上記現象の物理的機構を理解するために、(001)磁性金属/非磁性金属ヘテロ構造のバンド計算を行った。その結果、ヘテロ構造の量子閉じ込め状態は、非磁性金属のブリルアンゾーンの中心に近いフェルミ面近傍に生じることが示された。さらに、この非磁性金属層の量子閉じ込め状態は隣接する強磁性金属層の電子状態と結合し、強磁性金属層のスピンホール効果に影響を及ぼすことが示唆された。 本研究により、磁性金属/非磁性金属ヘテロ構造における量子閉じ込め効果とスピンホール効果の関連が示され、量子閉じ込め効果を利用して電流誘起SOTを制御できることが明らかになった。
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