2023 Fiscal Year Annual Research Report
ナノマテリアルを用いた大気下で最適駆動可能な演算ハードウェア素子の創製
Project/Area Number |
21K14527
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
宇佐美 雄生 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 助教 (60878437)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マテリアルリザバー / 電気化学演算素子 / カーボンナノチューブ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年脳機能の動作原理をナノ材料ネットワークの電荷移動を用いて模倣し、効率的な演算処理を行うシステムが注目されている。電気化学現象は脳内の神経回路の信号伝達に用いられており、ナノ材料を用いた演算システム駆動に向けた有力な候補である。前年度までの研究により、ノイズ注入及びデータ拡張による大気中のイオン伝導由来の演算機能向上を実現した。そのため2023年度では材料系を拡張し、単層カーボンナノチューブ(SWNT)を基軸として、種々の官能基導入によるイオン伝導性の発現及び演算性能比較を行い、イオン種の違いと演算性能との相関を検討した。 SWNTを酸化させカルボキシル基を導入し、カウンターイオンをカリウムイオン(K+)とプロトン(H+)の2種類準備して電気計測を行ったところ、K+では大気中で非線形電気特性が発現した一方、H+では非線形性が消失し、線形電気特性が現れることが明らかになった。電気化学インピーダンス計測の結果から、イオン伝導性が発現していることがわかり、カウンターイオンの違いによって電気伝導度が大きく変わったことが原因だと考えられる。演算機能評価のために波形生成タスクを実施したところ、K+を有するカルボキシル基導入SWNTがH+を有するものよりも高い波形生成精度であり、イオン種の違いによりイオン伝導性に違いが生じ、演算性能にも影響することが明らかになった。 本研究期間全体を通して、イオン伝導を駆動力に用い演算素子への応用を検討し、適切な材料、環境を選定することで、音声認識や画像認識に成功した。これは生体脳における演算機能の駆動力となっている電気化学反応を有機分子に適用し演算素子デバイスとして動作させた最初の例であり、これらを用いた次世代情報処理デバイスの創製、AIシステムへの実装が期待される。
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Research Products
(17 results)