2021 Fiscal Year Research-status Report
Enhancement of carrier mobility and development of superconducting properties in heavy pnictogen square net insulators
Project/Area Number |
21K14532
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河底 秀幸 東北大学, 理学研究科, 助教 (20757132)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ビスマス正方格子 / エピタキシャル薄膜 / 高移動度 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、多層膜固相エピタキシー法を用い、単結晶基板・加熱温度などの合成条件を最適化することで、MgO(100)基板上でのみ、La2O2Biエピタキシャル薄膜が合成できることを見出した。電気抵抗率の温度依存性を既報と比較することで、La2O2Biエピタキシャル薄膜が、おおよそ化学量論組成であることがわかった。キャリア移動度は21 cm2/Vs (10 K)となり、既報の多結晶バルク試料の3倍に増大した。これは、主に、エピタキシャル薄膜化による粒界散乱の低減に由来すると考えられる。また、ホール係数は、150 K前後で負から正に符号が反転し、光学吸収スペクトル測定では、バンドキャップは観測されなかった。したがって、La2O2Biエピタキシャル薄膜は半金属であることがわかった。 さらに、当初の計画を変更して、Y2O2Biの多結晶バルク試料を用いて、超伝導物性におけるH置換、F置換、Li挿入の効果を検討した。H置換とLi挿入では、c軸長が増加した。一方で、F置換では、c軸長に減少した。また対照的に、a軸長は、ドーピングの元素種・組成によらず、ぼほ一定であった。これらの結果は、Bi正方格子内のBi-Bi結合は強く、層間のBi正方格子同士の結合が相対的に弱いことを示唆する。さらに、H置換、F置換、Li挿入を施したすべての試料が、金属的な電気伝導を示した。また、合成した試料では、F組成の最も高い試料を除いたすべてにおいて、超伝導転移を確認し、ドーパントの元素種によらず、c/a比の増加とともに、超伝導転移温度が向上する傾向を見出した。多結晶バルク試料また、既報の酸素挿入されたY2O2Biと比較すると、c/a比が同程度であってもLi挿入やF置換した試料では高い超伝導転移温度を示した。これは、導入された電子キャリアが、超伝導転移温度の向上に寄与していると考えらえれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多層膜固相エピタキシー法により、MgO(100)基板上へのLa2O2Biエピタキシャル薄膜を初めて合成した。さらに、La2O2Biエピタキシャル薄膜では、既報の多結晶バルク試料の3倍となる21 cm2/Vsという高いキャリア移動度を実現した。また、La2O2Biエピタキシャル薄膜は、MgO(100)基板上にしか合成できなかったため、移動度などのエピタキシャル歪み依存性は明らかにできなかったが、電子輸送特性から電子と正孔の2種類のキャリアの存在を確認し、光学吸収スペクトルからと、フェルミ準位近傍での有限の状態密度の存在も確認でき、La2O2Biが半金属であることを実験的に明らかにした。 さらに、Y2O2Biの超伝導物性の元素置換効果を評価した結果、H置換、F置換、Li挿入を実現した。ドーパントの元素種によらず、c/a比と超伝導転移温度が相関することがわかり、これまで酸素挿入で報告されていたc/a比依存性の普遍性を明らかにできた。また、元素置換による電子キャリア導入の効果で、超伝導転移温度が向上した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、多層膜固相エピタキシー法により、La2O2Biエピタキシャル薄膜を合成し、高いキャリア移動度を実現し、研究遂行の基盤を構築できた。来年度は、すでに合成手法を確立しているLa2O2Sbエピタキシャル薄膜も含め、前駆体多層膜の構造など、十分に検討できていない合成条件を最適化し、薄膜試料の高品質化に取り組み、キャリア移動度の更なる向上をめざす。さらに、化学ドーピングにより、La2O2BiやLa2O2Sbのエピタキシャル薄膜での超伝導転移の実現もめざす。
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Causes of Carryover |
今年度は、La2O2Biエピタキシャル薄膜が、MgO(100)基板上でしか合成できなかったので、単結晶基板などの薄膜合成に関する物品費が当初の予定より掛からなかったため、次年度使用額が生じた。 来年度は、必要な消耗品の購入に加え、多角的に研究を進めるため、パソコンなどを購入し、第一原理計算により電子構造が評価できる体制を整える予定である。
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