2021 Fiscal Year Research-status Report
空間電荷制限下で動作する薄膜フォトカソード電子銃における雑音低減の研究
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21K14535
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石田 高史 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (60766525)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フォトカソード / 電子銃 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では電子銃から放出される電子線の雑音を低減可能な薄膜フォトカソード電子銃の開発を目的に、本年度は1)薄膜フォトカソードの作製、2)電子銃の電極設計・製作および真空チャンバーの立ち上げを主に進めた。1)薄膜フォトカソードの作製では、パルスレーザー堆積法を用いて酸化マグネシウム基板上に六ホウ化ランタンを成膜した。本薄膜は走査透過電子顕微鏡により結晶構造観察と組成分析を行った。六ホウ化ランタン薄膜は多結晶として成膜され、フォトカソードとして利用可能な結晶性薄膜であることがわかった。また基板と薄膜の界面は不純物が析出しておりターゲットの純度の向上が求められることもわかった。2)電子銃の電極設計・製作では、上記の薄膜フォトカソードが搭載可能な電極の設計・製作を進めた。薄膜フォトカソード表面の酸化膜を取り除くために真空中で1300度以上の高温での加熱が必要となる。そのため電極には高融点材料あるモリブデンをもちいた。薄膜フォトカソードの加熱機構にはタングステンワイヤーによる抵抗加熱方式を採用した。真空チャンバーにヒータ付き電極を搭載し-1kVの電圧印加と1400度を超える加熱が可能であることを確認した。真空チャンバーの立ち上げでは、スパッタイオンポンプに加え非蒸発型ゲッタポンプを真空チャンバーに搭載した。本真空チャンバーはベーキングにより超高真空が容易に達成され、光電子放出に十分な真空を準備することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では2021年度は1)薄膜フォトカソードの作製と2)電極の設計・作製を予定していた。1)については酸化マグネシウム基板上に六ホウ化ランタンを蒸着し、薄膜の作製に成功した。また2)にいてもアノードおよびカソードや加熱機構の開発が完了した。以上のように従来の目的は達成された。これに加えて半導体検出器やレンズステージの設計も完了し次年度の計画の遂行に過不足ない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
高効率な電子線検出が可能な半導体検出器およびフォトカソードへの入射光をマイクロメートルオーダまで集光するためのレンズを真空内に保持するためのホルダーを作製した後、真空チャンバーに搭載し本フォトカソードでの電子放出特性を測定する。フォトカソードの結晶性の向上や電子銃の電極の改良についても実験の進捗に合わせ進める。
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