2021 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体実現のためのイリジウム酸化物酸素欠損の価数分解光電子ホログラフィー
Project/Area Number |
21K14537
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
堀江 理恵 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特別契約職員(助教) (60784543)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光電子ホログラフィー / 高温超伝導体創成 / ドーパント / イリジウム酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
イリジウム酸化物Sr2IrO4は、銅酸化物高温超伝導体の母物質の一つであるLa2CuO4と結晶構造や電子状態など複数の類似点をもつ。また、Ir 5d軌道が大きなスピン軌道相互作用をもち伝導に寄与することから、約20%のキャリアドープで新規メカニズムの高温超伝導体になる可能性が期待されているが、未だイリジウム酸化物の超伝導化は報告されていない。報告者は、これまでで最高のキャリアドープ量のSr1.86La0.14IrO4単結晶育成に成功した。本研究では、2次元表示型光電子分析器と大型放射光施設SPring-8を用い、超伝導化に重要なLaによる電子ドーピング時の、各原子周りの局所構造を価数選択光電子ホログラフィーにより解明し、超伝導化につながる知見を得ることを目指した。大型放射光施設SPring-8軟X線BL25SU設置のRFA(Retarding Field Analyzer)は、光電子の角度分布(光電子ホログラム)を2 次元的に一度に測定できるため、結晶中の特定原子から見た原子配列をホログラフィーの手法で直接解析できる。実験の結果、SrサイトへのLaドープによりIr4+がIr3+になっていることを高分解能な光電子スペクトルから確認し、LaやIr3+の価数分解光電子ホログラフィー解析を行った結果、Ir3+の周りには歪があることが判明した。つまり、十分な電子ドープが行われているにも拘らず超伝導にならない原因は、IrO2面に導入された歪みであることを明らかにすることができた。
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