2021 Fiscal Year Research-status Report
蛍光X線ホログラフィーへの活用を目指す高分解能なX線二次元検出器の開発
Project/Area Number |
21K14553
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
橋本 由介 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (60872877)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | X線二次元検出器 / 蛍光X線ホログラフィー / 軟X線放射光 / 原子配列計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高エネルギー分解能なX線二次元検出器を開発し、材料中のドーパントの価数ごとの原子配列を蛍光X線ホログラフィーで可視化することを目的とする。開発を目指すX線二次元検出器の構造を要約すると、蛍光X線を直接分光せず光電子に変換して光電子分光の電子エネルギー分析器で観測することで、エネルギー分解能を飛躍的に向上させ二次元検出を可能にするものである。 本年度の研究計画である装置設計および製作は順調に遂行でき、硬X線エネルギー領域の蛍光X線分析を達成するために、耐電圧性能を向上させたエネルギー分析の設計を取りいれて図面作成、および部品購入を進めた。電源や真空チャンバーの整備も整えることができ、現在、電子エネルギー分析器の組立工程に進めることができた。 また本技術の実証実験を兼ねて、既にSPring-8 BL25SUで運用されている阻止電場型エネルギー分析器(RFA)を応用することで、スピネル型鉄酸化物の軟X線領域での蛍光X線角度分布の測定に成功した。SPring-8 BL25SUのRFAは、現在開発中のX線二次元検出器のベースとした実験装置である。この分析器を利用して金板で反射した蛍光X線の広角角度分布の測定に成功したことは、蛍光X線を金で光電子に変換してエネルギー分析することが可能であることを実証できたことを意味する。試料に対するX線の入射角度が光電子検出効率に影響することを明らかにし、装置設計に反映できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存の装置を利用して、実際に光電子を変換できるかの検証を行った。BL25SUに常設された阻止電場型エネルギー分析器(RFA)で使用可能なAu蒸着板とピンホールをもつ試料キャリアを開発した。実験は軟X線放射光、試料キャリア、阻止電場型電子エネルギー分析器(RFA)、高感度カメラから構成される。(1) X線で励起された測定試料から放射された蛍光X線は光電子変換面に照射される。(2) 試料から放射される蛍光X線によりAu蒸着平板から光電子が励起される。(3) Auの光電子はピンホールを通過したのち立体角±50度でRFAに取り込まれる。(4) RFAでエネルギー分析された光電子がマイクロチャンネルプレート(MCP)で増幅されスクリーンに投影される。(5) これを高感度カメラで撮影することで、今回はじめて蛍光X線角度分布の観測に成功した。 金反射板で変換するタイプと金メッシュを透過させて光電子変換する試料キャリアを検証し、反射式では蛍光X線像を観測できた。透過式ではメッシュが粗すぎるため光電子検出が難しかったが、軟X線を透過できる薄膜を用意すれば実験は可能である状況まで研究を推進できた。この実験結果を、新たに開発中の装置配置に反映させ、設計ならびに部品調達を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は硬X線対応の光電子ホログラフィー装置の組み立て、要素試験を実施する予定である。 また、2022年7月に予定されているSPring-8 BL25SUの装置を使った実験では試料面に対してX線入射角3°以下の斜入射実験配置になるように再設計した試料キャリアを使って再試験を行う。この修正により試料面で散乱されるX線が電子変換のための金板に投影されなくなることで、散乱X線に由来する光電子のバックグラウンドを抑えられることが期待される。
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