2022 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study of photoinduced force scanning microscopy for observation of excited states of single molecules
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21K14554
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
山根 秀勝 北里大学, 理学部, 助教 (10867823)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラズモン / 光誘起力顕微鏡 / 光マニピュレーション / 離散双極子近似 / 光物性理論 / 単一分子 / キラル分子 / superchiral field |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の解析手法では、分子内部の構造を分子の波動関数から取り込んでいるため、理論的には分子や分子内部に働く輻射力を解析することが可能である。 前年度に完成させた電場応答解析の計算手法を用いて、本年度は単一のキラル分子に働く光圧について光と分子の微視的な相互作用の観点から解析した。光誘起力顕微鏡によるキラル分子の光学応答計測により得られた知見をもとに、単一のキラル分子内部に働く輻射力を解析した。分子のキラリティは、巨視的な観測から得られた変数を用いた現象論的な取り扱いをするのではなく、量子化学計算から得られた分子の内部分極の空間構造として応答電場解析に取り込むことで、局在プラズモン中のキラル分子の内部構造に起因する光学応答を解析することができるようになった。これにより、分子に働く光圧の分子配向依存性や回転トルクを評価することに成功した。キラルプラズモニックナノ構造体によって誘起されるsuperchiral fieldとの相互作用により、キラル分子のエナンチオマーには互いに反対方向のキラル勾配力が働く。本研究の定量的な解析により、単一分子レベルのエナンチオ選択的光トラッピングの可能性を示した。 また、同様の解析手法により、光ピンセットと薄層クロマトグラフ(TLC)を組み合わせた新しい化学分析手法である「プラズモンTLC法」について、実験グループと協力し、光圧による波長依存性や試料の共鳴特性依存性について理論的に解析することで、その機能を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、光誘起力顕微鏡による単一分子測定の理論的検討を行い、論文発表に至った。その中で、分子内部の分極構造と近接場の空間構造との相互作用の観点から実験観測に対する理論予測を行うことができた。また、光誘起力顕微鏡だけでなく、同じ数値解析手法を用いることで、分子に内部に働く光圧を評価することができるようになり、プラズモン中のキラル分子の円二色性の観測や回転運動制御、エナンチオ選択的光学捕捉の可能性を示したほか、プラズモンTLCの原理を理論的に示すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、これまで行ってきた光誘起力顕微鏡(PiFM)の単一分子測定の理論解析によって得られた知見をもとに実験研究者らと協力して実験結果の理論解析を行う。分子の電子状態を解析し、その光学応答を理論的に評価することで、実験的に得られた分子のPiFMシグナルについて物理学的な説明を与える。また、我々が開発した電場応答解析の数値計算手法を拡張して、テラヘルツ帯プラズモニクスにおける単一分子の応答解析を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大状況を鑑み、国際学会における海外出張を延期した。また、オープンアクセス誌への論文の掲載費を年度末に確保していたが支払いが翌年度となった。上記の理由により、予算執行計画の変更が必要となり、次年度使用額が生じた。繰越金は、論文掲載費、国内外学会出張費及び、設備の増設・新規導入に用いる。
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Research Products
(7 results)