2023 Fiscal Year Annual Research Report
蜘蛛の巣の粘性物質の挙動解明のための光プローブ分析システムの新たな開発
Project/Area Number |
21K14556
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
趙 越 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20832166)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 赤外吸収分光法 / 中赤外イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
蜘蛛の巣に含まれる粘性物質は、糖タンパク質、塩、そして水で構成された混合物であるが、その構成成分や振る舞いは完全に解明されていない。本研究では、超短パルスレーザー光源を用いた分光手法を活用し、蜘蛛の巣の粘性物質の光物性(蛍光、多光子吸収発光、赤外吸収、第二高調波など)を調査した。これらの手法により、蜘蛛の巣の粘性物質における分子構造の特徴や成分分布の変化に関する情報を明らかにした。
具体的には、蛍光、多光子吸収発光、光第二高調波発生の観察を一体化したスキャンレス顕微イメージングシステムを用い、蜘蛛の巣の粘性物質の光物性の計測、観察、分析を行った。これにより、従来知られていなかった現象が観察され、蜘蛛の巣の粘性物質の構成成分の分布と振る舞いなどの実験結果を分析した結果、蜘蛛の巣の粘性物質が付着するとき、二次の非線形感受率をもつ結晶化したものが析出したことが判明した。その後、EDS(エネルギー分散型X線分光法)を用いて元素マッピングを行い、高解像度の電子顕微画像を得て、その結晶を構成する元素を特定した。非線形顕微鏡で取得した顕微像とEDSによる元素マッピングを分析した結果、蜘蛛の巣における粘性物質はイオン液体の存在が示唆された。この発見は、当初の予想を超えるも のであり、非常に興味深い現象である。最後、イオン液体の存在を確認するため、赤外分光イメージング装置を用いて、赤外吸収スペクトルから成分分布をマッピングした。その結果、蜘蛛の巣の粘性物質には、水和リン酸二水素コリンというイオン液体が存在することを実験的に証明した。これらの粘性物質の特徴や挙動から、構成成分および粘着メカニズムに関する説明を導き出すことができた。
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