2021 Fiscal Year Research-status Report
ペロブスカイト結晶-ナノ共振器を用いた低閾値かつ狭帯域ナノレーザーの開発
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21K14580
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡本 拓也 北海道大学, 電子科学研究所, 特別研究員(PD) (40888608)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ペロブスカイト / レーザー / 結晶 / 欠陥 / 共振器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、利得媒質のペロブスカイト結晶とファブリ・ペローナノ共振器の組み合わせによるサブnmオーダーのスペクトル半値幅と低閾値化、そしてレーザー発振波長の選択を同時に達成可能なナノレーザーの開発を目的とする。本年度は、ペロブスカイト結晶における自然放射増幅光の発振閾値制御に重要な、結晶のハロゲン欠陥密度の検討と、ペロブスカイトナノ結晶または市販の半導体量子ドットと金および酸化物の薄膜で構成されたナノ共振器の光学特性評価を行った。まず、ペロブスカイトマイクロ結晶への同種ハロゲンアニオンの添加および光照射を行った。結晶におけるハロゲン欠陥の回復速度および蛍光寿命の増加量は結晶のアスペクト比ではなく、比表面積の大きさに依存することを明らかにした。この研究に基づいた論文はWiley-VCHのAdvanced Optical Materialsに令和3年6月に掲載された。次に、ファブリ・ペローナノ共振器の薄膜材料および膜厚の最適化に向けて、ペロブスカイトナノ結晶および市販の半導体量子ドットを用いて金および酸化物の薄膜で構成されたナノ共振器の光学特性を評価した。しかし、どちらの量子ドットも共振器上では消光され、蛍光強度は減少した。そこで、ペロブスカイト量子ドットと薄膜材料の電荷移動について検討するため、ドナーであるペロブスカイト量子ドット薄膜とアクセプターとなる酸化チタンまたは比較としてフラーレンを組み合わせたヘテロ接合材料における光学特性について評価した。このようなヘテロ接合界面における電荷移動においてドナー・アクセプター界面に近づくにつれて動的な過程から静的な過程へと変化することが明らかとなった。この研究に基づいた論文はアメリカ化学会のThe Journal of Physical Chemistry Lettersに令和3年9月に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ハロゲン化鉛ペロブスカイト結晶へのハロゲンアニオン添加による、ハロゲン欠陥密度および自然放射増幅光の発振閾値における変化の検討と、ペロブスカイトナノ結晶および市販の半導体量子ドットを用いて金および酸化物の薄膜で構成されたナノ共振器の光学特性評価を行った。ペロブスカイトのロッド状およびプレート状結晶では、ともに同種ハロゲンイオンの添加による蛍光寿命の大幅な増加がみられた。さらに、プレート状結晶ではハロゲン欠陥回復に伴う自然放射増幅光における発振閾値の減少がみられた。しかし、その一方でハロゲン欠陥回復を行ったロッド状結晶では、欠陥回復前の発振閾値よりも低い強度の光励起により劣化することがわかった。よって、アスペクト比が異なるマイクロ結晶において、プレート状結晶を用いることで、ハロゲンアニオン欠陥回復後も安定して自然放射増幅光を放出できることがわかった。また、ペロブスカイト結晶および半導体量子ドットの光学特性におけるナノ共振器を構成する酸化物薄膜材料との距離依存性について検討した結果、蛍光体と酸化物薄膜間の距離が重要であることが示唆された。以上の理由により、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、「ハロゲン混合ペロブスカイトの自然放射増幅光の発振閾値制御」および「ナノ共振器の構造最適化」、そして「ペロブスカイト結晶-ナノ共振器におけるレーザー発振の低閾値化および安定性の向上」を達成するため次の3つの研究を行う。第一に、ハロゲン混合ペロブスカイトの自然放射増幅光の発振について前駆体試料における異種ハロゲンイオンの仕込み濃度比を変えることで混合ハロゲンペロブスカイト結晶を直接生成し、ハロゲン組成と波長、そして自然放射増幅光の発振閾値との関係を明らかにする。第二に、前年度に評価したペロブスカイトナノ結晶または量子ドットとナノ共振器の系における光学特性をもとに、蛍光体-ナノ共振器間の距離を制御し、酸化物薄膜の材質や膜厚、そして構造の最適化を行う。第三に、ペロブスカイト結晶-ナノ共振器におけるレーザー閾値および安定性の評価を行う。まず、ペロブスカイト結晶-ナノ共振器の系において、レーザー発振閾値、スペクトル幅、そして発振モードを評価する。次に、ペロブスカイト結晶をナノ共振器の酸化物層内部に埋め込む。ペロブスカイト結晶を埋め込んだナノ共振器のレーザー発振の閾値および安定性について、ナノ共振器表面にペロブスカイト結晶を分散させたのみのナノレーザーと比較を行う。
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Research Products
(19 results)