2022 Fiscal Year Research-status Report
Electron spin resonance study on the photo-induced structural change of the cryptochrome from Europian Robin.
Project/Area Number |
21K14581
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
長嶋 宏樹 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (60814027)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電子スピン共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
クリプトクロムは動物の磁気感受の第一候補タンパク質である。クリプトクロムは青色光を吸収して,光誘起電荷分離反応によりラジカルペアを形成する。ラジカルペアの磁場効果により,磁場を感じることができるのだと考えられている。しかしクリプトクロムが,“ラジカルペアを形成した後にどのような構造変化を起こしているのか”はわかっておらず,その磁場を感じた後のシグナルがどのようにして送られて鳥の脳に伝わっているかは全くの未解明である。本研究は,それらの地磁気効果の後のメカニズムを明らかにするために,ラジカルを観測可能な電子スピン共鳴を用い,光で形成されるラジカルおよびスピンラベルされたタンパク質の観測を行うものである。本研究で計画した実験の遂行については新型コロナウィルスの影響と世界的な半導体の不足のために遅れている。 その代わりに,クリプトクロムをはじめとするタンパク質へのスピンラベリング法の再検討をおこなった。本計画では,システインをターゲットとしたスピンラベル法を想定していたが,システイン残基はクリプトクロムのメカニズムに重要な役割を果たしている可能性があると考えられる。そこで,システインへのスピンラベルに代わる方法を検討し, 1. 金属を使ったラベル法, 2. クリックケミストリーを利用したラベル法, 3. 酵素を使ったラベル法の3種類を検討した。2の有機合成については有機合成のための設備を立ち上げて, 実際の合成に着手した。またクリプトクロムの精製に成功した。大量のクリプトクロムの合成が完了すれば部位特異的変異によるラベルによる構造解析に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の申請時点ごろから始まった 新型コロナウィルスの蔓延, 半導体部品の不足による装置納入の大幅な遅れにより, タンパク質の合成が進まない状況になってしまったことで当初の予定よりも遅れている。しかしクリプトクロムのタンパク質を大腸菌から得ることに成功した。クロマトグラフィにより, タンパク質を精製しタグを酵素反応により切り取りタンパク質を得ることに成功した。 また従来のスピンラベル法では, 通常システイン残基をターゲットとしてニトロキシドラジカルを結合させるのが一般的である。しかしクリプトクロムはいくつものシステイン残基を持っており, 狙った箇所にラジカルを結合させることが難しい。そこで, 新規のスピンラベルを合成し, クリックケミストリー反応によりスピンラベルを行うことを計画し, 合成のための実験系を立ち上げた。予定したスピンラベルの合成を開始しており, 現在全5ステップのうち4ステップ目まで反応を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質の量を10 mg以上のスケールで取れるように, 大腸菌培養のスケールアップに取り組む。スピンラベル法についても, クリックケミストリーを使ったもの以外に, 金属等を利用したスピンラベル, あるいは酵素反応を利用したスピンラベル法を検討しており, これらを実現するための部位特異的変異の導入を行うことを計画している。 有機合成についてもあとわずかなステップで得られるので, 継続して合成を進めてスピンラベルを導入したクリプトクロムの作成に取り組む。試料が完成し次第, スピンラベルを用いた電子電子二重共鳴法による距離計測を行うことで, クリプトクロムの構造変化を観測する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスと半導体の不足により, クリプトクロムの大量合成に必要な機材がほぼ1年納品されず, 電子スピン共鳴計測をする状況にはならなかった。 そのため、本研究で計画していたクリプトクロムを用いた実験を開始できる状況になかった。 代わりに、本研究提案からさらに発展して新しいスピンラベルの方法を検討し, その具体的な計画を立案して, そのために予算を割り当てている。合成に必要な各種試薬, ガラス物品等の消耗品, クリプトクロムの大量合成に必要な試薬, クロマトシステムの購入が必要と考えている。
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