2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of energy and charge transfer dynamics in lanthanide complexes using electric-field modulated transient spectroscopy
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21K14590
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮田 潔志 九州大学, 理学研究院, 助教 (80808056)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 機能性発光分子材料 / 希土類発光体 / 超高速分光 / エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①電場印可測定を行うための新しい装置の整備・構築、②希土類錯体の溶液中の基礎物性の探索、③固体薄膜状態での光物性 の三つの方向性で研究を推進した。 依然として液体、固体を問わず発光性三価ランタニド錯体の光物性を時間分解分光で調べた研究は世界でも例が少なく、有機配位子と希土類金属イオン間のエネルギー移動に関して多くの知見を先駆けて得ることができた。予備的な知見としてEu(hfa)3(DPPTO)2錯体が溶液中で二種類のエネルギー移動過程をもっていることは解明されていたが、本年度の研究により更にEu2(hfa)3(dptri)2二核錯体や、発光金属としてEuをTbにかえたTb3+(hfa)3(DPPTO)2錯体、Tb2(hfa)3(dptri)2二核錯体を溶液や薄膜、ホストゲスト膜など様々な形態でエネルギー移動を比較して学理の追及を行った。結果として、二種類のエネルギー移動が発光性三価ランタニドイオンについては一般的な蛍光としてあること、それらの起源が二種類の配位子が錯体内に含まれることなどが分かった。また、特定のホスト材料を使ってホスト―ゲスト膜を作成することで、発光効率を向上させることができることも見出した。種々の高速分光でメカニズムを調べることで、これがホスト分子内での高速項間交差に由来するものであることがわかった。これらは今後電場印可でダイナミクスにどのような変調がもたらせられるか解析する上で重要な基礎的な知見である。現在これらの成果は学術論文としてまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで当研究室で全く触れていなかった電気化学のシステムを導入し、稼働させるところまで整備出来たのは大きな進捗である。また、この電気化学のシステムにあう分光装置を自作することで、市販の分光電気化学装置よりも測定対象とできる試料の幅が大きいシステムを構築する目途がついた。 また、コントロール実験も含めてこれまで以上に多種類の参加ランタニド錯体の光ダイナミクスを調べることで、有機配位子から中心金属へのエネルギー移動に関する学理も着実に解明を進めている。電子-構造-スピンの自由度が複雑に織りなす光物性を読み解くための考え方が徐々に確立されてきており、得られた知見は学術論文に発表するに足るものも多かった。 以上のように、当研究計画の肝となる電場印可下での時間分解分光測定の実装に向けて、着実に準備を進めることができた。特に学理の解明の観点からは、思いがけずホスト―ゲスト膜の高効率エネルギー移動現象を発見することができ、希土類発光錯体を利用した有機発光ダイオードデバイスへの展開が見える成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
電場印可のためのポテンショスタットの整備と、希土類錯体の学理の理解が進める行った本計画の基盤部分は順調に進めたため、今は具体的に電場を掛けるためのデバイスを設計、構築して、原理検証の実験を行う段階に進めている。 デバイスの安定性の観点から、印加する電場は連続電場ではなくパルス電場とする方が望ましい。従ってパルス電場とパルス励起光の同期を取る必要があり、また時間分解能の良い測定を行うためには、電場印可がデバイスのRC回路としての性質から決まる応答時間の影響で遅くなりすぎないようにうまく設計を行う必要がある。また、デバイス構造以外にも測定に影響する膜形態、ホスト―ゲスト膜の分子の濃度比、膜厚など様々なファクターが測定のクオリティを左右することが分かってきた。 デバイス構造での試料が用意できたら、極力事前に時間分解分光測定でできる限りの物性評価は行った上で、最適な条件を見極めて電場印可の実験に臨みたい。
また、引き続き学理解明の実験も継続し、特にTb錯体については温度依存測定がエネルギー移動の効率を決めるファクターを読み解く鍵になることがわかってきたため、材料設計指針を提案するという観点も目標に見据えながら理解を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で計画していた旅費を使う場面がなく、それに伴って予算の計画に変更が生じたため。無理に使用することなく次年度に繰り越した方が有効に予算を遣えると判断した。
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