2022 Fiscal Year Annual Research Report
Control of Proton Conductivity by Vibrational Level Modulation
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21K14596
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
福島 知宏 北海道大学, 理学研究院, 講師 (50801560)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 振動強結合 / 水 / イオン伝導 / 動的水和 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子の有する振動エネルギーと共振器の真空場のエネルギーが結合することにより、量子相関を生じ、振動ポラリトン状態という分子間にエネルギー相関を有する状態が創出される。特に結合エネルギーが大きいときには振動強結合状態と呼ばれる状態が生じ、近年では熱化学反応のダイナミクスを制御可能な指針として提案されている。振動強結合状態の電気化学系への適用とその原理探索を目的として、本年度は共振器中における水の振動強結合の観測と電解質水溶液のイオン伝導度変調に関して検討を行った。 水分子のOH伸縮モードが共振器モードと相互作用することによって、振動超強強結合状態となることを見出した(JPCC 2021)。また振動超強結合状態においてはプロトン伝導が一桁以上上昇することを見出した(JACS 2022)。実際にイオン伝導変調はイオン依存性が存在し、アニオンよりもカチオンにおいて顕著なイオン依存性が観測された。疎水的なカチオンや、正の水和を示すLiイオンにおいてはイオン伝導度の変調は大きくなかったのに対して、負の水和を示すCsイオンにおいては、イオン伝導度の劇的な向上が観測された。このことは水和イオンが移動する際の動的水和環境が振動強結合により量子相関が誘起され、イオン伝導挙動が変調したことが示唆された。また温度依存性に関して検討を行ったところ、非アレニウス型の挙動が観測された。結合強度の温度依存性が観測されなかったことから、水和ネットワークが温度に対して鋭敏に変化し、イオン伝導挙動に反映されていることが示唆されたた(論文投稿準備中)。さらには濃厚電解質にした際にはイオン伝導度の増大が観測され、水和ネットワークの破壊と振動強結合の間には相乗効果があることが示唆された(論文投稿準備中)。 以上の検討により、振動準位変調に伴いイオン伝導制御が可能となることを見出し、その設計指針を提案した。
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Research Products
(27 results)