2021 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of Photosensitivity by Difference in Molecular Size and Its Application to PDT
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21K14597
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井手 雄紀 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任助教 (40883070)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポリケトン / ポリイミン / calix[3]ピロール / 環状化合物 / 機能性分子 / 分子サイズ制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
光線力学的療法(PDT)は、光感受性物質が集積している箇所にレーザー光を照射することで一重項酸素を発生させ、がん細胞を死滅させる治療法である。一方で、大きな分子のがん細胞へ集積する特性(EPR効果)が知られており、分子サイズの違いが影響を与えることは非常に興味深い。そこで、分子サイズの精密な制御が可能な鎖状および環状ポリケトンの合成を試みた。環状ポリケトンにおいては、分子サイズに応じてアルカリ金属イオンとの相互作用が大きく異なることがわかった。鎖状もしくは環状化合物と構造的制御を行うことで、同じ分子量をもつ化合物においても、触媒反応への適用可能性や蛍光発光挙動を示した(Chem.Commun., 2022)。また、鎖状ヘキサケトンから小さな環状化合物であるcalix[3]pyrroleおよびcalix[3]furanの合成を達成している(J. Am. Chem. Soc., 2021)。calix[3]pyrrole類縁体は環構造の歪みに由来して酸性条件下では環拡大反応が進行することもわかっており、そのメカニズムをHPLCによる反応追跡、量子計算の結果に基づいて明らかにした(Chem. Eur. J., 2021)。難溶性π共役ポリイミン化合物を利用した第10族金属イオンの吸着率について検討を行った(Eur. J. Inorg. Chem., 2021)。ポリケトンの骨格にイミン部位を組み込むことで、ポリケトンの互変異性が抑制された化合物が得られ、金属キレート部位および蛍光発光部位を導入することで微量金属イオン検出の機能を創出することに成功した(Eur. J. Org. Chem., 2021)。以上のように、異なる分子サイズのケトンおよびイミン化合物を合成し、様々な機能を創出してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きな分子のがん細胞へ集積する特性(EPR効果)を持つ光線力学的療法(PDT)に適用可能な機能性分子を創出するために、分子サイズが異なるケトンおよびイミン化合物を合成した。それらの化合物は金属イオン吸着および検出蛍光材料、触媒などの機能性を創出してきた。生体関連にて非常に重要なポルフィリンの前駆体として知られるポルフィリノーゲンの骨格を持つcalix[n]ピロールについての研究に取り組んだ。3つのピロール環で形成された中心金属イオンを持たない環状化合物のcalix[3]ピロール合成を達成した。さらに、酸性条件下で時間経過にともなってcalix[6]ピロール、calix[4]ピロールのような環拡大反応が進行することが明らかになった。このように、環状化合物を利用した簡便な分子サイズ制御を達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られてきた分子サイズが異なるケトンおよびイミン化合物に対して、分光学的測定および量子化学計算を利用して評価を進める予定である。分光特性に優れた結果が発現した場合、細胞組織に組み込み、細胞毒性評価やがん細胞に対する化合物の集積性評価に取り組む。更なる機能性の発現を目指して、鎖状および環状化合物の新規化合物合成も検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
物性測定等に使用する予定だったユニットなどが半導体不足等の要因により品切れ・納期遅延、価格も高騰しているため、いくつかの物品購入を見送った。また、参加予定だった学会やシンポジウムが中止またはオンライン開催になるなどで旅費などの使用が見送られた。翌年度は今年度に購入予定だった物品もあわせて、年度当初から計画に沿って使用していく予定である。
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