2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K14606
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山門 陵平 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 助教 (90735549)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インターロック分子 / CT錯体 / 強誘電体材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の情報通信社会の発展に対応するべく、強誘電体の技術革新が求められている。そこで本研究課題では、有機強誘電体材料の一つである電荷移動(CT)錯体型強誘電体に着目し、CT錯体にインターロック構造を導入することで、安定な結晶の作製およびキュリー温度の上昇を目指した。 まず初めに、計算化学を利用した分子設計に基づき、カップリング反応を中心とした有機合成を駆使し、インターロック分子の合成を進めた。ドナーを導入したV字屈曲型π共役系分子と、アクセプターを導入したV字屈曲型π共役系分子を、回転性の高い共有結合である3重結合で連結したインターロック分子の合成を試みたところ、目的のインターロック分子を合成することに成功した。得られた分子の構造は、核磁気共鳴(NMR)スペクトルおよび高分解能質量分析によって行った。インターロック構造に由来した分子内相互作用および分子の配置を明らかにするために、別途合成したモデル化合物を用いて、核磁気共鳴スペクトルの比較を行ったところ、プロトンシグナルのシフトから、分子内におけるπ共役系の近接を確認した。さらに、紫外・可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの測定により、分子内電荷移動錯体の形成を示唆する結果が得られた。これらの結果がいずれも理論計算と一致することも見出している。 その他、前駆体を用いて集積化およびその構造解析を行った。単結晶X線構造解析より、CT錯体の形成が確認され、インターロック構造を構築することにより、さらに安定にCT相互作用を基盤とした集合体形成が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的化合物の1つを合成することに成功し、光学特性評価およびNMR測定を用いて評価を行うことができた。 計画していた分子内電荷移動錯体の形成にも成功し、さらなる分子設計の最適化に向けた重要な知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
合成に成功したインターロック分子の各種分光法による解析結果をもとにして、さらなる分子設計の最適化をおこなう。特にこれまでは比較的小さいπ共役系をドナーまたはアクセプターとして導入してきたが、分子内電荷移動錯体の形成効率を向上させることを目的とし、より大きなπ共役系の選択を予定している。 単結晶をはじめとした集合体の構築についても、継続して検討する。
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Causes of Carryover |
一部参加予定だった学会が中止もしくはオンライン開催になったため、旅費を使用しなかった。また、装置についても一部は別予算で購入したものを使用可能だったため、購入しなかった。 NMRの測定が今後さらに必要であることから、高価な重溶媒代などとして、使用する予定である。
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