2021 Fiscal Year Research-status Report
高効率光電変換系構築を目指した、新規C2対称型π共役骨格の合成と物性解明
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21K14613
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中野 健央 九州大学, ネガティブエミッションテクノロジー研究センター, 特任助教 (50844312)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | クロリン / ポルフィリン / チアゾール / チオフェン / 吸収スペクトル / 蛍光スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
「研究実施計画」に記載した、C2対称型の新規ポルフィリン類縁体のうち、ヘテロ原子導入骨格についての合成検討を行なった。その中でも、特異な材料特性の発現が期待できる、硫黄原子に着目し、チアゾール環含有骨格の構築に注力した。 チアゾール環に対し、ピロール環2つがそれぞれ1つの炭素で架橋した中間体について合成し、それを用いた、ホルミル基を有するピロール化合物との縮合反応(MacDonald法)によって、チアゾール骨格を有する新規ポルフィリン骨格の合成を達成した。特に、チアゾール環部位においては硫黄原子が骨格周縁、及び中心に位置する2通りについてそれぞれ合成を行ない、それらの構造について二次元NMR、及び質量分析等を活用し、解析した。その結果、硫黄原子が骨格周縁に位置する化合物は、π骨格が部分的に還元されたクロリン型化合物であることがわかった。光学特性の測定結果もそれを裏付けており、すなわち、クロリン骨格に由来すると思われる、長波長領域(600から700 nm)に、特徴的な吸収スペクトルが確認された。また、チアゾール環、チオフェン環の双方を有する新規クロリン化合物についても合成を達成しており、その光学特性を検証したところ、吸収、蛍光スペクトル双方の長波長化が確認できた。これらは硫黄原子数の増加に伴うものであると推察され、ヘテロ原資導入を伴う新規骨格構築が、長波長領域における吸収波長の精密制御に効果的であることを示唆する結果が得られた。 本研究成果については、Organic Letters、及びJournal of Porphyrins and Phthalocyaninesにそれぞれ1報ずつ論文が掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘテロ原子を導入したポルフィリン骨格の合成研究として、複数のチアゾール環含有新規骨格の合成を達成している。本研究で得られた合成の知見を基に、今後はC2対称型骨格構築を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ヘテロ原子導入型のC2対称骨格として、チアゾール環を有する骨格の合成検証を行う。チアゾール環とピロール環から形成される中間体について合成し、その酸性条件下における二量化的縮合反応によって、目的骨格が得られると考えている。鍵となる二量化的縮合反応において用いる試薬など、反応条件を精査する。 また、チアゾール環の部分的還元を伴い導入されたエトキシ基について、さらに分子変換を行うことでピロール環などを導入し、分子周縁にも金属配位部位を形成する。これにより、骨格の中心、及び周縁部位にそれぞれ異なる金属原子を導入した、複核金属錯体の合成について検討を進める。 ヘテロ原子導入以外の骨格として、π拡張型のC2対称骨格についても合成検討を進める。特に、インドール環を有する縮環型の骨格についての合成に着手する。 また、異種複素環含有骨格からなる新規光学材料というコンセプトの基、新規な配位子、及びそれを用いた金属錯体の合成などについても展開する。
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