2021 Fiscal Year Research-status Report
アニオン性錯体の光励起状態を利用するラジカル型有機反応の開発
Project/Area Number |
21K14623
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
永島 佑貴 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (90880055)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光反応 / 励起状態 / ロジウムアート錯体 / ホウ素化反応 / 計算化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、アニオン性配位子であるシクロペンタジエニルを用いた「シクロペンタジエニル (Cp) ロジウム (Rh) 錯体」に着目した。 本錯体は、配向基を有する芳香環の C-H 結合を選択的にメタル化し多様な官能基へと変換できる有用な触媒であり、炭素・酸素・窒素などの電気陰性元素の導入反応に用いられてきたものの、ホウ素などの電気陽性元素の導入反応には用いられてこなかった。そこで、反応中間体であるアリールロジウム(III) を直接光励起させ、Lewis塩基性の高いアリールロジウム(II)アニオン性錯体へと変換することができれば、Lewis酸性を有するジボロン (B-B) 試薬と強く相互作用でき、ホウ素化反応が促進されるのではないかと考えた。 触媒配位子や配向基を検討した結果、塩基性配向基を有する基質を用いた場合に、アリールロジウム(III) 中間体を効率よく励起三重項状態へと変換できることを見出した。この現象を用いてホウ素化反応を検討した結果、「塩基性配向基に特異的な芳香環のオルト位C-H ホウ素化反応」が可視光照射下でのみ選択的に進行することを見出した。実験化学的手法と理論計算による解析の結果、本反応はラジカル種を介すことなく、ロジウム中心の還元によって反応が促進されていることを明らかにした。 本研究成果は、以下の学術雑誌に掲載された。J. Tanaka, Y. Nagashima,* A. J. Araujo Dias, K. Tanaka* Photo-Induced Ortho-C-H Borylation of Arenes through In Situ Generation of Rhodium(II) Ate Complex. J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 11325-11331.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アニオン性配位子であるシクロペンタジエニルを用いた「シクロペンタジエニル (Cp) ロジウム (Rh) 錯体」に着目し、中間体の光励起状態を直接利用できる反応形式を設計することで、有機ホウ素化合物の新規合成法を開発した。反応機構の解析の結果、当初の計画であったラジカル型反応ではないことが明らかになったものの、従来法では実現困難な炭素-ヘテロ元素結合構築反応を開発するという当初の目的の一つを達成した。本成果は、2021年の J. Am. Soc. Chem. 誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、アニオン性錯体として「有機ホウ素アート錯体」に注目し、励起状態の直接利用や、これを酸化還元して得られるラジカルの反応性の追求によって、材料科学や創薬化学へ広く利用可能な炭素-ヘテロ元素結合構築反応を開拓します。また、当該年度に見出した「Cpロジウム錯体」をさらに発展させ、熱反応では困難であった分子変換を実現する新たな光反応も開拓します。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス対応による実験日の減少により、実験消耗品(試薬、溶媒、触媒、シリカゲルなど)の消費量が予定よりも少なかったため、次年度使用額が発生しました。次年度の実験消耗品として使用する予定です。
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