2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K14624
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菅 拓也 金沢大学, 物質化学系, 助教 (60777928)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フルベン / 光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、反応のモデル化合物となるフルベン誘導体(6,6-アルキルまたはアリールフルベン)の合成を行い、その光反応に対する挙動を調べた。特に、光触媒による一電子酸化反応、続くフルベンーベンゼン転位が進行することを期待し、TBADT, Ir(ppy)系, Ru(bpy)系, さらには4CzIPN系などのフォトレドックス触媒存在下、CFLまたはLED光による反応を試みた。さらに、光によらない一電子酸化試薬(DDQなど)の利用も試みた。しかし、基質の分解等が原因となり、残念ながら目的の反応の実現には至っていない。 光・酸素と極微量(0.001mol%程度)の増感剤存在下でフルベンが速やかに反応し、環開裂を伴い3,3-ジアルキル-4,5,6,7-デヒドロオキセパノンという高い酸化数を持つ7員環化合物を与えることがわかった(文献検索の結果、これは極めてマイナーではあるが既知反応であった)。少なくともフルベンの環構造は破壊されているため、さらなる誘導化によって目的を達成できる可能性がある。例えば、生成物はカルボカチオン転位、ノルカラジエン型のシグマトロピー転位、還元反応という複数の段階を踏めば1,2-ジアルキルベンゼンに誘導できる可能性があると考えられる。そこで、ある程度の量を合成し、現在検討を行っている。 本筋とは必ずしも関係ないが、フルベンの興味深い挙動として、アセトニトリル中でトロピウム塩と反応させると速やかにフルベンのおそらく1,2-位が反応し、ポリマー化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フルベン誘導体は主に求核剤、すなわち塩基性物質との反応で知られるが、実際に合成しその挙動を調べたところ、予想外に酸に弱い(ポリマー化傾向にある)ことが判明した。そのため、当初想定していた一電子酸化反応によるルートは多くの場合基質の分解を招くことがわかった。反応の実現には、方針転換を要するものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、今後の研究には方針の転換が必要である。現在考えている手法として、次の2パターンが考えられる。 1:酸素酸化により偶然得られたオキセパノン誘導体をCope転位によって環縮小し、ベンゼンに異性化させる。酸化開裂によりフルベンの環構造を破壊するところまでは達成できている。アルキル1,2-転位、シグマトロピー転位、還元を経て、ここからベンゼンに誘導できる可能性は必ずしも低くはない。ただし、ステップ数がかさむことと、酸素酸化の収率が現在中程度に留まるため、実現できたとしても実用化には大きな課題が残る。 2:フルベンへの求核攻撃を起点とした変換反応を試みる。合成化学的に知られるフルベンーベンゼン転位の例では、求核剤がフルベンに攻撃することによって起きると言われている。極めて限定的なフルベン誘導体しかこの反応性を示さないが、求核剤や反応条件を種々検討することによって様々なフルベン誘導体に適用範囲を拡張する。
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