2021 Fiscal Year Research-status Report
カチオンを運ぶ分子水車:触媒機能開拓と高難度分子変換への応用
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21K14627
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西井 祐二 大阪大学, 工学研究科, 講師 (70773787)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カチオン / トリプチセン / 求電子置換反応 / ハロゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が独自に発見した水車型のトリプチセン骨格を持つカチオン種が、特異な電荷分離構造に基づく高い反応性を示すことに着目し、その理論的な理解を深めるとともに、高難度反応の触媒として応用することを目指す。このような化学種は、通常では不活性な芳香族分子の直接官能基化に有用であり、合成化学的な利用価値を開拓することも重要な課題として位置づけている。 本年度では、主に量子化学計算を駆使したメカニズム解析について取り組み、空間的な軌道相互作用と比べて、誘起効果がカチオン種の反応活性に支配的な影響を持つことを突き止めた。また、トリプチセン骨格そのものの電荷状態を詳しく調べることで、その位置選択的なハロゲン化を実現することもできた。この結果は学術論文として報告している (Org. Lett. 2021, 23, 3552.)。統計学的にマイナーとなる異性体を選択的が得られることは、合成化学的にも意義深い結果であり、実際、高分子&超分子を専門とする研究者によって論文紹介が書かれていることからも (Synfacts 2021, 17(07), 0755.)、その波及効果が伺える。 このような理論的な研究結果に基づいて、予備的な成果ではあるものの、研究提案の時点では想定していなかった新規触媒の開発にも成功している。この触媒は、従来のトリプチセン触媒と比較しても高い活性を持ち、また構造的なチューニングの多様性にも優れることから、今後の研究を進める新たなプラットフォームとして活用することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の項目でも記載したとおり、研究目的のひとつであったカチオン種の反応性に関する理論的な理解について大きな進展があった。またその結果に基づいて、新規触媒の開発についても良好な結果が得られていることから、順調に進捗していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究方針としては、新規触媒の開発を重点的に検討する。触媒構造のチューニングと反応活性との相関関係を実験的に調べることができれば、そのデータセットに基づいて、より詳細なメカニズム解析が可能になると考えられる。また、触媒活性種に相当するカチオン性化学種の単離および構造決定を行うことで、錯体化学的なアプローチからも反応機構の詳細を調べる。
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Causes of Carryover |
研究スペースの縮小(オープンラボとして借用していたスペースの閉鎖)などにより、当初予定していた有機合成化学用機器(アルミブロック・エバポレーターなど)の購入を見合わせたため使用額が大きく減少した。また新型コロナの影響で学会がオンライン開催となったため、旅費の計上がなかった。次年度では、見合わせていた機器の購入などを使用計画に組み込む。
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Research Products
(8 results)