2021 Fiscal Year Research-status Report
触媒的C(sp3)-H結合活性化を志向した新規LLX型ピンサー配位子の開発
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21K14628
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鳥越 尊 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (80823129)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 炭素-水素結合活性化 / 配位子設計 / 遷移金属触媒 / シリル配位子 / 有機ホウ素化合物 / アルカン / 均一系触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属触媒を用いたアルカン等の単純な有機分子のC(sp3)-H結合の活性化を目的とし、二つの中性配位子と一つのアニオン性配位子からなる、LLX型の三座配位子の開発に取り組んでいる。令和3年度は、研究実施計画に記載した「モデル反応1:NNSiピンサーイリジウム錯体を用いたC(sp3)-Hボリル化」を中心に実施した。ビピリジン類の適した位置にヒドロシリル基を導入した、二つの窒素と一つのケイ素からなるNNSi配位子を種々合成し、イリジウム触媒を用いたアルカンのC(sp3)-Hボリル化を検討した。その結果、ヒドロシリル基を持たない配位子では反応がほとんど進行しなかったのに対し、生成物が収率良く得られることが明らかとなった。フェナントロリン骨格の配位子が特に有効であり、過剰量の基質の使用が必須でない点など、従来の代表的な配位子を凌ぐ活性の触媒を得ることができた。また、二種類の反応点を有するいくつかの基質の反応において、従来の配位子とは異なる選択性で反応が進行することを明らかとした。「モデル反応2:PNSiピンサーイリジウム錯体を用いたアルカンの脱水素化」の検討にも着手し、リン、窒素、ケイ素からなるPNSi三座配位子の合成に成功した。脱水素化反応と並行し、PNSi三座配位子を用いるイリジウム触媒によるC(sp3)-Hボリル化を検討したところ、効率良く反応が進行した。これは、剛直なLLX型ピンサー配位子が、イリジウム触媒によるC(sp3)-Hボリル化における優れた配位子設計指針であることを示すものと考えている。また、PNSi三座配位子が従来の配位子やNNSi三座配位子と比べて立体障害の影響を強く受け、高い選択性で生成物を与えることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、NNSiピンサー配位子がイリジウム触媒によるC(sp3)-Hボリル化の優れた配位子となることを明らかとし、従来の代表的な配位子を凌ぐ配位子を得ることに成功したため。また、PNSiピンサー配位子の合成にも成功し、令和4年度の研究の円滑な実施が可能となったことに加え、PNSi配位子もまたイリジウム触媒によるC(sp3)-Hボリル化の優れた配位子となることを明らかとしたため。これにより、LLX型ピンサー配位子がイリジウム触媒によるC(sp3)-Hボリル化の配位子設計指針として妥当であることを示すとともに、従来では困難であった立体的に混み合った有効な触媒活性種を手にし、特徴ある選択性で進行するC(sp3)-Hボリル化を実現したため。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に得られた知見をもとに、LLX型ピンサー配位子、特にPNSiピンサー配位子を用いるC(sp3)-H結合活性化の検討を実施する。既に知見を蓄えている、イリジウム触媒によるC(sp3)-Hボリル化の検討を継続するとともに、研究実施計画に記載した通り「モデル反応2:PNSiピンサーイリジウム触媒を用いたアルカンの脱水素化」の検討を本格的に開始する。
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