2022 Fiscal Year Research-status Report
触媒の不活性および活性種の不安定性を克服する革新的カルベン触媒の創製
Project/Area Number |
21K14632
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
道上 健一 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 助教 (20838742)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | aza-Breslow中間体 / イミドイルアゾリウム塩 / 単結晶X線構造解析 / 含窒素ヘテロ環カルベン / アルジミン |
Outline of Annual Research Achievements |
報告例の極めて少ない「窒素上に保護基を持つアルジミン」の活性化や、それによって生じる不安定活性種の安定化を基盤とした研究に取り組んでおり、所属研究室で独自に開発した電子不足な含窒素ヘテロ環状カルベン(NHC)を用いて、アルジミンとの反応により形成される「aza-Breslow中間体」を鍵活性種とする触媒的分子変換法の開発を目指している。 2022年度は前年度に単離した、通常室温で速やかに分解する「N-スルホニル-aza-Breslow中間体」の単結晶X線構造解析に成功し、その構造を初めて明らかにした。また、当該化合物を脱プロトン化したアミドアニオン体の二電子酸化、または、当該中間体の直接酸化によって対応するイミドイルアゾリウム塩を合成し、その単離と単結晶X線構造解析にも初めて成功した。N上にアルキル基やアリール基を持つイミドイルアゾリウムを経由する分子変換は過去に報告されているものの、N上の置換基によらず、該当する中間体の単離例は皆無である。 さらに、電子不足なNHCを用いることで、N上にアルコキシカルボニル基を持つアルジミンから対応するaza-Breslow中間体が速やかに生成することも確認した。従来のNHCではN-アルコキシカルボニルイミンからのaza-Breslow中間体の生成反応は平衡であり、かつ原料系に偏っていることが知られており、極性転換型分子変換への応用は未だ報告されていない。 以上、本研究成果は窒素上に保護基を持つ、合成上有用なアルジミンの触媒的極性転換型分子変換の開発に向けた重要な知見と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、従来分解しやすく単離困難であったN-スルホニルアザ-Breslow中間体、および、その二電子酸化体であるイミドイルアゾリウムについて、いずれも単結晶X線構造解析に成功し、それらの構造を確実なものとした。さらに、過去に達成されていない、N-アルコキシカルボニルアルジミンの極性転換を伴うaza-Breslow中間体の効率的は発生にも成功している。いずれにおいても、安定化のために用いたNHCのかさ高さに起因し、イミン由来の炭素周辺が立体的に保護されていたことから触媒的分子変換への展開は困難であったものの、電子不足かつかさの小さいNHCの合成法の開発と、それらを用いたaza-Breslow中間体の発生、および触媒的分子変換への応用検討を進めている。 従来のNHCでは実現できない、「N上に保護基を持つアルジミンの極性転換型分子変換」の実現可能性が強く示唆されたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、当初計画から一部変更した「アザ-Breslow中間体の酸化を伴う触媒的分子変換」について、かさの小さい電子不足なNHCを活用したN-スルホニル-aza-Breslow中間体を鍵中間体とする手法を主に検討する。 また、新たに見出したN-アルコキシカルボニル-aza-Breslow中間体の効率的発生に関して、当該中間体の単離構造決定や安定性、および種々の求電子剤に対する求核性を調査する。また、N-スルホニル-aza-Breslow中間体と同様に酸化を検討し、生じ得るN-アルコキシカルボニルイミドイルアゾリウムの求電子性についても評価する予定である。
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Causes of Carryover |
当初は、頂いた支給額を過不足なく使用する予定で試薬等の手配をしていましたが、申請者の責に依らない、残額からのやむを得ない引き上げが昨年度末に急遽発生しました。しかしながら、予告されていた残額全額の引き上げよりも少ない額が引き上げられ、その結果、年度末日に次年度使用額が発生し、対応が不可能でした。 仮に2023年度における上記の使用をお認め頂けましたら、試薬や消耗品等の物品費として計上させていただきます。
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