2021 Fiscal Year Research-status Report
一時的な保護基を活用したカルボン酸の直截的修飾法の開拓
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21K14633
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鈴木 弘嗣 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 助教 (60827682)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カルボン酸 / 還元的カップリング / 銅触媒 / 不斉反応 / アルドール反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルボン酸は医薬品等に広く含まれる非常に重要な骨格である。しかしその直截的なα位修飾法の開発は、カルボン酸がもつ酸性水素の影響により限定的であった。そこで遷移金属触媒と還元剤を活用することにより、カルボン酸を反応系内で一時的に保護および活性化することができないかと考えた。 本研究では、上述したカルボン酸の保護・活性化機構の確立と、その機構を応用した新規不斉反応への適用を目指した。種々の検討により、銅触媒の存在下、アクリル酸とヒドロシランを作用させることで、水素放出を伴う円滑なカルボン酸の保護が進行することがわかった。また同条件において、アクリル酸に対して二当量のヒドロシランを用いると、カルボン酸エノラートが発生し、求核剤として機能することも明らかにした。これらの知見に基づき、銅触媒によるアクリル酸の還元的アルドール反応の開発を実施した。ケトンと反応させることにより、目的のアルドール付加体が高収率で得られた。また配位子としてキラルビスホスフィン配位子を使用することで、高エナンチオ選択的な反応へ展開することも成功している。本研究により、還元的な手法によるカルボン酸類のα位修飾を、初めて達成した。現在、本機構はアルドール反応以外の付加反応に適用可能なことを見出しつつあり、更なる展開を検討中である。 以上のように、本研究ではカルボン酸に対してヒドロシランを作用させることにより、カルボン酸の反応系内における一時的な保護とそれに続く活性化を明らかにし、それを高エナンチオ選択的な反応へ展開することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で第一の目的としていた還元剤によるカルボン酸類の保護・活性化を明らかにし、付加反応への展開もできた。特に不斉配位子による高エナンチオ選択的な反応の開発に成功したことから、初年度の目標は概ね達成できたと言える。 また他の活性化アルケンと本反応で発生するシリル保護されたカルボン酸の反応性を比較することにより、シリル保護されたカルボン酸の特異な反応性を確認でき、反応性に関する重要な知見を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の検討によってアルドール反応以外の付加反応においても、本反応系がうまく機能することを明らかにすることができたため、それらの反応の高効率化および高立体選択的な反応への応用を目指す。また当初予定していた、二種の金属触媒を用いた協働触媒系によるカルボン酸類の新たなα位官能基化の開発を行う。初年度の結果から還元剤によるカルボン酸エノラートの発生は、使用する金属触媒の種類により大きく影響されることが判明しているため、適切な遷移金属触媒の組み合わせの重点的な検討、およびそれらの金属種の組み合わせにより特異的に進行する反応の発見に努める。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに使用した。生じた余りは数%程度で問題ない。次年度に問題なく使用される額である。
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