2021 Fiscal Year Research-status Report
ナノ金属と多孔性イオン結晶を基盤とした革新的機能性ナノ物質の創成
Project/Area Number |
21K14639
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荻原 直希 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70848267)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポリオキソメタレート / 金属錯体 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
多孔性イオン結晶(Porous Ionic Crystals: PICs)はアニオン性の金属酸化物クラスターであるポリオキソメタレート(Polyoxometalate: POM)とマクロカチオン(カチオン性の多核金属錯体、金属酸化物クラスター等)からなる多孔性材料である。本課題では、PICsとナノ金属を組み合わせることで、革新的な機能性を創出することを目的としている。 それに先立ち、本年度ではPICsの分子設計に立脚した物性・機能の獲得を目指した。主要な研究結果として、下記三点の知見を見出すことができた。 (1)PICを構成するPOMが有するW元素をNb元素に置換すると、Nbと結合した酸素原子の負電荷が増大し、その結果として、塩基触媒反応の一種であるKnoevenagel縮合に対して高い触媒機能を示すこと(Nanoscale, 2021, 13, 18451)。 (2)マクロカチオンとしてAl13核クラスター(Al13O4(OH)24(H2O)12]7+)を有するPICsは酸触媒反応の一種であるPinacol転位に対して触媒活性を示すこと。さらに、Al13核クラスターの構造異性体の制御(ε-Keggin型からδ-Keggin型への構造制御)により、その酸触媒機能は向上すること(Chem. Commun., 2021, 57, 8893)。 (3)POM単体では触媒活性の乏しいCoを内包したPOMをCr3核錯体カチオンと複合化させてPICsを構築すると、電気化学的な酸素発生反応(Oxygen Evolution Reaction: OER)に対する触媒機能を示すようになること。また、この相乗的な触媒機能の発現には、Cr3核錯体カチオンからCo内包POMへの電子供与が重要な役割を果たすこと (J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 7, 2980)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではPICsを用いた機能性の創出は、ナノ金属との複合化により行う予定であった。しかし、ナノ金属を用いずとも、PICs単体の分子設計により、酸・塩基触媒、電極材料などの幅広い分野で機能を見出すことができた。 以上のことから、当初の計画以上の機能発現が見込めると考え、計画以上に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、PICsの構成ユニットであるPOMおよびマクロカチオンの精密設計により、化学反応場としてのPICsの有用性を実証してきた。反応場としてPICsをさらに有効活用するために、次年度以降は、高い触媒機能を有するナノ金属に着目し、PICsとナノ金属の複合化を試みる。PICsの細孔内部でのナノ金属合成および、ナノ金属へのPICs膜の被覆を行うことで、PICs単体あるいはナノ金属単体では獲得するのが困難であった相乗的な触媒機能の獲得を目指していきたいと考えている。
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