2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on Correlation between Magnetism and Electrical Conductivity in Electro-oxidized Actinide Phthalocyanine Complexes
Project/Area Number |
21K14644
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
田端 千紘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究職 (60783496)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウラン磁性体 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウランフタロシアニン錯体の一つである、サンドイッチ構造をもつ4価ウランフタロシアニン錯体UPc2について、中性種とカチオン種を合成し、結晶構造を決定し、(中性種についてのみ)中心金属であるウランイオンが示す磁性を調べた。中性種に関しては従来報告されていた構造と同じ構造であることが同定され、カチオン種に関しては過去に合成の報告が無い[UPc2][BF4]の結晶構造を初めて決定した。いずれもサンドイッチ状のUPc2分子が積層した層状構造をとることが確認された。中性種の磁気感受率の測定結果について結晶場解析を行い、擬縮退した2準位に由来するキュリー常磁性を低温まで示すことを明らかにした。さらに、第一原理計算による構造最適化を行い、カチオン種においてのみ、X線構造解析から決定した分子構造から大きく湾曲した構造が示唆され、結晶化に伴う強いパッキングの効果の存在が示された。これらの結果は2023年1月にJournal of Molecular Structure誌に掲載許可され、2023年4月に出版された。上記の研究結果を受けて、層状構造を有するウラン化合物におけるウランイオンが示す磁性をさらに詳細に調べるために、中性子散乱実験の実施に向けた準備を開始した。はじめに実験条件等の最適化のため、関連化合物としてハニカム層状構造をとるU2Pt6Ga15の中性子散乱実験を実施した。実験の結果、比較的少量の試料でも磁性由来の信号が観測可能であることがわかった。得られた磁気散乱の回折パターンを群論的手法を援用し解析することで、本物質の低温の磁気構造の決定に成功し、この成果について2022年8月に開催された国際学会で口頭発表を行った。論文投稿については現在準備中であり、2023年度前期を目処に国際雑誌に投稿予定である。同型化合物のU2Pt6Al15についても同様にデータを取得し、現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウランフタロシアニン錯体およびその電解酸化カチオン種の合成・結晶構造解析・磁性解析・電子構造計算といった2022年までの一連の成果をまとめて論文出版することができた。さらに、より詳細な磁性を調べるための微視的なアプローチとして、中性子散乱実験の適用準備を開始し、いくつかの関連化合物で磁気構造決定を含む好ましい成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ウラン層状化合物の中性子散乱実験を複数の化合物について実施し、ウランフタロシアニン結晶における実験条件の最適化を行う。その上で、ウランフタロシアニン結晶を新たに合成し中性子散乱実験を行うことで、ウランイオンの磁性の微視的な解析および、X線構造解析では決定困難な水素イオンの正確な位置決定を行う。
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Causes of Carryover |
京都大学から日本原子力研究開発機構(JAEA)に所属異動があり、いくつかの設備・機器に関して,異動先のJAEAに既設の設備を使用することで新たに同じものを購入することが不要となった。これにより生じた次年度使用額は、当該研究計画の発展に有効活用するため、国際会議の参加費用(旅費、参加費)、論文投稿費(英文校閲含む)、および中性子散乱実験用の試料容器の製作費用に充てる。
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