2021 Fiscal Year Research-status Report
Realization of single-molecule magnetoluminescence in luminescent open-shell molecules
Project/Area Number |
21K14649
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
松岡 亮太 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (80806521)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ラジカル / 発光 / 磁場 / スピン |
Outline of Annual Research Achievements |
発光特性を示す有機ラジカルは、閉殻分子にはない特異な機能を示す新物質群として注目を集めており、発光スペクトルの磁場依存性(マグネトルミネッセンス)はその代表例である。本研究はマグネトルミネッセンス発現の鍵となる発光ラジカル2量体を定量的に生成・孤立させることで、これまで未達成であった単一分子でのマグネトルミネッセンスを実現することを目的としている。また、これにより、外部磁場がどのようにラジカルの発光過程に影響を与えているかを分子レベルで明らかにする。 今年度は、剛直なリンカー部位に発光ラジカルユニットを2つ連結したジラジカル分子を設計し、その合成を行った。合成した分子はジラジカルに特徴的なESRシグナルを示し、ジクロロメタン中で653 nmをピークとする赤色発光を示した。また分子をPMMA中に希釈分散し、発光測定を行った結果、ラジカルの「エキシマー的発光」と思われる発光帯が新たに観測された。この試料について、磁場下で発光測定を行った結果、4.2 Kにおいてマグネトルミネッセンスを観測した。この結果は、本研究の目標である「単一分子でのマグネトルミネッセンス」の実現を強く示唆するものであると同時に、マグネトルミネッセンス発現に必要最小限なラジカルの数が2であることを示唆している。また、発光スペクトルおよび各種波長における発光減衰曲線を様々な磁場・温度下で測定し、ジラジカル分子の発光およびマグネトルミネッセンスのメカニズムを提唱した。その中で、ラジカル2量体が基底状態において複数のスピン多重度(一重項・三重項)をとりうることがマグネトルミネッセンスにおいて重要な役割を果たすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度に設計・合成した分子によって、本研究の最大の目標である、「単一分子でのマグネトルミネッセンス」の観測を強く示唆する結果が得られた。また、発光スペクトルおよび各種波長における発光減衰曲線を様々な磁場・温度下で測定し、その解析からマグネトルミネッセンスのメカニズムを明らかにしつつある。当初2年間で行う計画であった内容の大部分がすでに達成されており、計画以上に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は初年度に得られた成果を論文や学会発表などで広く公表するとともに、ラジカル2量体が示す発光特性について、さらに知見を深めていく。具体的には、(1) 発光の磁場効果に対してホスト材料が与える影響、(2) ラジカル2量体が示す「エキシマー的発光」の本質、の2点を重点的に調査する。これらはラジカルのマグネトルミネッセンスをより俯瞰的に理解するうえで重要な役割を果たすと考えられる。
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