2021 Fiscal Year Research-status Report
生分解性プラスチック生産時における高分子量化技術の開発
Project/Area Number |
21K14661
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
百武 真奈美 東京工業大学, 物質理工学院, JSPS特別研究員 (90733957)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポリヒドロキシアルカン酸 / 分子量 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、糖や植物油といったバイオマスから微生物により合成されるバイオポリエステルである。分子量は高分子材料の強度や加工性に影響する因子であるが、ポリエステルであるPHAは熱加工に伴い加水分解が生じ低分子量化しうるため、生産段階ではできるだけ高分子量であることが望まれる。本研究では、PHA生産時の高分子量化に関わる知見の獲得を試みる。 初年度はまず、PHAの重合反応を担う重合酵素に注目し、なかでも酵素の立体構造に関する報告のあるRalstonia eutropha由来のPHA重合酵素(PhaC)をターゲットに研究を開始した。遺伝子工学的手法によりランダムな変異を有するPHA重合酵素のライブラリーを構築し、これを以前に構築した手法でHPLC分析することで、分子量に影響する部位に変異が導入された変異体を選抜することを試みた。HPLCを用いた手法では、連鎖移動剤としてPHAの分子鎖末端に導入された標識試薬と、繰り返し構造部分それぞれの強度比から重合度を算出し、この値を野生型酵素の値と比較することで分子量の増減を判断している。今回、HPLC分析の定量性を高めるため連鎖移動剤として特性の異なる複数の標識試薬の利用や、酵素発現バランスを変えることで系中におけるPHA分子鎖数を増やすなどを試みたが、分子量特性に変化が生じた変異体の選抜には至らなかった。これは、本分析系を適用できた他の重合酵素とは異なり、本実験系では標識試薬の分子鎖末端への導入効率が著しく低かったことが原因と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R. eutropha由来のPhaCをターゲットとした実験を行い、分子量に影響する変異を有する酵素の取得を試みたが、現時点ではまだ取得できていない。今回、特性の異なる連鎖移動剤の一つとして、培養液中への溶解量を増やし、分子鎖末端への導入効率を高めるべく親水性の高い化合物を用いた。この場合は、分子鎖末端に結合していないフリーの化合物がサンプル中に残存しやすくなり、これがHPLC分析時に検出され分子量算出が不正確になることが分かった。本分析手法は多検体を簡便に分析できることを目指しているため、サンプルの扱いやすさを保ちつつ手法を改善するにあたり適度な溶解性をもつ標識試薬の利用が適切であることが分かった。また、実験条件を様々に変更してもPhaCが連鎖移動剤の存在下にて比較的高分子量のPHAを合成することが分かり、高分子量PHAの生産に関し興味深い知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
R. eutropha由来のPhaCによって合成されるPHAは分子量が高く、繰り返し構造と分子鎖末端の存在比の差が大きいためにHPLCによる分析が不正確になってしまったと推測される。R. eutropha由来PhaCよりも合成するPHA分子量が低い他の重合酵素をターゲットに分子量特性に関与する酵素部位の知見獲得を試みる。得られた知見をR. eutropha由来PhaCと関連付けて考えるため、アミノ酸配列の類似性がある一定程度ある重合酵素の利用を検討している。
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Causes of Carryover |
有用な改変体の取得に至らず、その後の操作に使用予定であった試薬や分析費用が発生せず次年度使用額が生じた。改変体を取得でき次第、予定通りの使用をさせていただくほか、研究の進展を早めるため、高効率な遺伝子操作キットなどの購入費用に充てさせていただく予定である。
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