2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Photo-functional Materials Based on Interactions between Chelete and Nonchelate Ligands of Typical Element Complexes
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21K14673
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 峻一郎 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (30875711)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 典型元素錯体 / 光電子物性 / 配位子間相互作用 / 共役系高分子 / 発光 / リン光 / 錯体化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属錯体の配位子は、多座のキレート配位子と単座の非キレート配位子に大別される。 これまで、典型元素錯体の光・電子物性制御は、主にキレート配位子が有するπ電子系の修飾・変換によって実現されてきた。一方、非キレート配位子を用いた物性制御のための指針は体系化されていない。そこで本研究では、キレート配位子と非キレート配位子間の電子的相互作用を用いた電子物性制御の新手法を確立することを目指す。 今年度は、異なる非キレート配位子をもつ種々のケイ素ホルマザン錯体を合成し、これらの光学物性の違いについて詳細に評価した。その結果、キレート-非キレート配位子の軌道エネルギーの差が変化し、吸収・発光波長が制御できることが明らかとなった。さらに、このケイ素錯体を共役系高分子の主鎖に導入することによって、生体イメージングなどに有用な、1000 nm以上の近赤外領域に発光を示すフィルム材料を作製できた。 一方、キレート-非キレート配位子間の相互作用はπ電子系とσ電子との相互作用であるため、立体電子効果の影響も強く受けることが予想される。そこで、キレート配位子上に立体的大きさの異なる種々の置換基を有するアルミニウム錯体を合成し、それらの光学特性の違いを検討した。その結果、結合した二つの共役平面のなす二面角、および、これらの共役系のエネルギー準位が変化することで、77 Kにおけるリン光発光強度が著しく増大することを見出した。最も強いリン光強度を示す錯体においては、結晶状態で室温リン光特性を有することも明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、キレート-非キレート配位子間の相互作用を利用した金属錯体の物性制御を目的としている。本年度、ケイ素錯体やアルミニウム錯体において、近赤外発光特性やリン光特性など、当初想定していた物性に対する先の相互作用の影響を明らかにすることができた。さらに、他の13族元素錯体において、電子励起状態の分子とルイス塩基との相互作用が、中心金属種に応じて変化するという、当初想定していなかった稀有な現象も観測しており、今後さらなる検討を行うことで、高機能な刺激応答材料の創出につながることが期待される。 一方、錯体を高分子化すると配位子間相互作用よりも、ユニット間相互作用が優先するため、前者の相互作用を利用した材料物性制御は依然として困難であると言える。また、部分的に得られた近赤外発光や室温リン光の発光量子収率は測定限界に近く、実用にはさらなる高効率化が求められる。これらの点について今後検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子化による配位子間相互作用の制御を志向して、コモノマーユニットの新規設計を実施する。これまでは共役拡張を目指して平面性を向上させた分子設計を主に行ってきたが、配位子間相互作用をより顕在化するため、ねじれた構造や交差共役ユニットを積極的に導入することで課題の解消に務める。これらのユニットの導入によって、室温リン光や熱活性化型遅延蛍光、近赤外発光特性などを有する高分子が得られると共に、配位子間相互作用に基づく物性制御が可能になると期待される。 さらに、前年度明らかとなった、励起状態におけるルイス塩基応答性に対する元素依存性についてより詳細に検討するため、配位子構造や塩基構造をスクリーニングすることで、依存性の強弱の制御やメカニズムの解明に取り組む。 また、固体状態における発光効率のさらなる向上にむけ、これまで非キレート配位子として用いていたユニットに縮環構造を導入したり、スピロ環構造を導入したりすることによって、分子の剛直性と分子間相互作用の低減を両立することを目指す。
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