2021 Fiscal Year Research-status Report
水分解反応を駆動力として自走する高分子マイクロチューブモーターの合成
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21K14685
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
加藤 遼 中央大学, 理工学部, 助教 (40801189)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロチューブ / 光重合 / 自走能 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
自走する(自身の動力で動く)マイクロチューブモーターが、バイオメディカルやマイク ロロボティクス分野において大きな注目を集めている。本研究は、多孔性ポリカーボネイト膜を用いた鋳型内光ラジカル重合により、均質な高分子マイクロチューブを合成し、それを“水分解反応で自走するマイクロチューブモーター”として完成することを目的としている。 本年度は、高分子マイクロチューブの新たな合成手法として、簡便かつ分子構造の自由度が高い“鋳型内光ラジカル重合法”を新たに確立した。具体的には、鋳型として多孔性PC膜に重合反応溶液を浸透させ、乾燥により溶媒を除去した後、多孔内の管壁にモノマーを付着させた状態でUV光を数分間照射した。光重合後の膜をDMFに浸し、鋳型を除去することで、架橋重合された高分子マイクロチューブを歩留まり高く、単離・精製することができた。モノマーには生体適合性・生分解性の高いリン酸エステル構造を有するメタクリレートモノマーを選択した。また、多孔性PC膜の孔径および膜厚を変えることで、マイクロチューブの外径(約5-10μm)および長さ(約17-20μm)が制御可能であることを明らかにした。得られたチューブの構造は走査型電子顕微鏡(FE-SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、赤外分光法(FT-IR)、 動的光散乱法(DLS)により定量的に評価した。 多孔性膜鋳型内での光ラジカル重合を高分子マイクロチューブモーターの合成に適用する着想は申請者の独創的アイデアであり、本手法の確立はマイクロチューブモーターの応用展開に向けた基盤技術になるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い実験を順調に遂行し、令和3年度の目標であった「光ラジカル重合による高分子マイクロチューブの合成と構造解析」を達成することができた。また、高分子マイクロチューブの内孔に接着層としてポリ(L-アルギニン)を修飾することで、光触媒である酸化チタンナノ粒子を密度高く内孔表面に吸着・固定できることが分かり、令和4年度の目標である光触媒を固定した高分子マイクロチューブの作製に向けた手ごたえを得つつある。さらに、予めポリ(L-アルギニン)を修飾したPC膜を用いて光重合を行うことで、外表面をポリ(L-アルギニン)で修飾した高分子マイクロチューブの合成にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、光触媒を固定した高分子マイクロチューブの作製を試みるとともに、最終目標である「水素・酸素バブル噴射を駆動力としたマイクロチューブモーターの実証と自走速度の制御」に挑戦する。また、本研究を進める過程で外表面に光触媒を固定した高分子マイクロチューブの合成にも成功した。光触媒は有毒有機化合物の光分解が可能である。そこで、光触媒を固定した高分子マイクロチューブモーターを自己攪拌により効率的な光有機物分解が可能な自走型光触媒としても応用する。
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Causes of Carryover |
上記の通り、本研究計画は概ね順調に進んでおり、当初計上していた合成試薬、多孔性PC膜、ガラス器具などの消耗品の消費量が予定より少なく済んだため、令和3年度は計上額との間に差額が生じた。令和4年度は、物性評価にむけてマイクロチューブの大量合成を進めるとともに、積極的な研究成果発表を行うため、合成に必要な消耗品や学会参加の経費などを計上する。
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Research Products
(3 results)